最新のネットの円データ推移を分解したグラフが、こちらです。
3本連続したバーは、第2章のグラフを、ネットではなくグロスで表示したものです。つまり青い部分(ロング=プラス)と赤い部分(ショート=マイナス)の合計がネット残高となり、マイナスなら売り越し、プラスなら買い越しとなります。
新たな発見とより詳細な仮説の導入
ロングとショートを別々に比較したことで面白い仮説が立てられるようになりました。番組の中で買いにシフト、売りにシフトという表現や、市場規模に関する仮説を立てています。
◎市場規模の大小を用いる場合
上の連続グラフの左と中を比較すると、ロングもショートも残高が減少しています。つまりロングとショートのコントラクトの合計が、IMM市場の円全体のポジションになりますが、総計が共に減少している状況を仮定した場合、参加者が円自体に興味を失いつつあり、市場から単に撤退している可能性が指摘できます。そうなると市場は増々動きにくくなり、直ぐに動き出す想定が難しくなります。
一方、ロングもショートも増えて市場が拡大する場合でも、やはり相場が均衡して動きにくくなる可能性はあります。下のグラフは豪ドルのブレークダウンですが、最新のデータは前回と比較してロングもショートも増加しています。
実際に相場は乱高下気味に方向感はありませんが、市場規模が拡大すること自体は参加者が興味を持ち始めている証拠です。何らかの要因が材料視されたためにポジションが増えているはずであり、近いうちにその正体が明確になれば、一気にその方向へ動くエネルギーが溜まり始めている状態だとは言えないでしょうか。
◎通貨のシフトを伝える場合
最初の円グラフの中と右を比較した場合、ロングが増えてショートが減るという現象が同時に発生していることが判ります。明らかに売り越しはあきらめ、買い越しに興味が集まっている状態が連想でき、極端に言えば正に市場全体がロング方向へドテンを行っている状況です。この場合はやはり通貨高を想定した動きだといわざるを得ず、ドル円であれば円高を警戒する必要が出てきます。
一方、円のロングが減少しショートが増加する場合は、逆に円安を想定した動きだと言うことになり、円安を警戒する必要が出てくるという訳です。
単独の積み上げグラフ
これは第3章の初めに登場する前週との増減比較にある最新データの内訳的内容です。上の円の最新データはロングの増加でプラス、ショートの減少でプラスという方向性を示したことで、1万コントラクト以上が結果的に買い増されたのと同じ効果に至ったことを示しています。
また、3週比較のグラフであたかも新たな動きが全くなかったように見えても、このグラフで詳細を確認することで、無気力な沈黙なのか、ガップリ四つの沈黙なのかを見極めることもできます。例えばロングもショートも大きく増加したとしても、その数が同数であれば増減はゼロです。一方で、ロングもショートも全く動きが無かった場合でも増減はゼロです。このように、ネットだけでは同じ結果になっても、中身が違う場合は次の仮説を立てる準備も大きく変わってくるはずです。
一緒に考察してみよう
上のグラフはEURのブレークダウンです。ここ3週間ロングとショートに際立った変化はありません。しかし、データの締切日の7月1日といえば、ユーロ高のピークだったにも関わらずロングは増えたどころが、逆に売り方向へシフトしており、1日以降の下落を裏付けています。戻したところではロングが手仕舞ってくる可能性が高く、依然として売り越し残高が圧倒的に多い地合いに沿って、上値が重い展開を想定したほうが無難だと言えそうです。
ただし、難しいのはクロスの動向であり、これが必ずしもユーロドル相場の下落を示唆していない状況は今の難しい部分でしょう。
ブルベアグラフ
最後に、ロングとショートの最新データを円グラフにしたのがブルベアグラフです。
ブレークダウンを掲載し始めてから、このグラフの意味は、単にロング・ショートの最新データを円グラフにしただけになってしまいましたが、割合を%で表示することが出来ており、細かい変化も見逃さない役目をしてくれれば御の字だと思っています。少ない経験則をお話しすると、
・どちらに偏っても10%を割り込む状態はなかなかあり得ないことから、10%に近づいた場合は、多少の反転を意識したり、
・また相場が随分と動いているにも関わらず、ブルベア比率に大きな変化がない場合などは、暫くトレンドが継続する可能性があること、
・そして逆にブルベアが大きく割合を変化させても相場があまり反応しない時は反転を意識する
などの活用方法は十分にあるでしょう。