福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

地蔵菩薩三国霊験記 3/14巻の6/7

2024-07-12 | 先祖供養

地蔵菩薩三国霊験記 3/14巻の6/7

六、柚子の木地蔵。

仁皇五十三代、淳和天皇の御宇、天長八年(831)仲春の比(ころ)宰相中将之春とて目出度人あり。生後時を待たずして母に後れて歎き切なりしほどに何なる追善をも為して母の孝養にせんとて、先ず平生母公の所持の具を佛寺に寄せ玉ひて佛財法禄となして成等正覚の資助となし、上品連臺に縁を結び五障三従の苦を離れて無垢成仏し玉へと一心に祈玉ひける。母公在世の時、類なく愛し玉へる柑子の木あり。彼の木を以て御長三寸二分(12.13㎝)の地蔵菩薩の像を造立し奉りて諷誦を捧げて先妣の菩提を吊ひ(ともらい)玉ひ、又曰く、造立し奉る柑子の木像地蔵菩薩一尊幷三宝、衆僧の御布施、右聖母の中陰聖忌正(まさに)盈(みて)んと欲す。光陰移り来って愛河未だ渇はざるに憂色口を破り、涙川袂に流る、伏して黄泉の資助を鑒(かんがみ)、仰で薩埵の引接を設(まう)く。茲によって志て紫箏を雪底に抽でしめんと欲す。徳は亡魂を妙蓮に生ず。然れば則ち戀慕の涙、胎蔵八葉の花を開く。追善の功、阿耨菩提の巣を結ぶ。伏して願はくは聖母、菩薩来迎を受け一切衆生与(と)共に、無垢等覚の位を證ぜしめ玉へ。仍って望む所、亡霊成仏敬って白す。天長八年(831)二月散位藤原之春と云々。彼の功徳に依りて覩史多天(兜率天)に生れたりと之春の夢に見玉ひけるとなん。」されども披露もし玉はざりしに母公平生の時さりがたき知音の女房あり。大納言の局と白しけるが或時の夢に、彼の母公幻ともなく立向て、されば人の特(たのむ)べき者は孝子にて侍るなり。我が生存の時、些子(いささか)ばかりも善根なし、されば無間の炎に沈みなんにし子息の之春の追善供養の功力によりて、其の造立の地蔵尊琰王宮に至りて我を大王に乞ひ奉り、菩薩我が苦に代りて無間の獄中に飛び入り玉へば炎消て水と成り下より蓮華開き出て所有(あらゆる)罪人化して三歳の孩児と成て蓮に坐して白雲の臺に上りて都率天に上り自在無礙の身と成りて十方自在の通力を得て即ち化菩薩(衆生の救済教化を目的として、仏・菩薩が神力により 化作 した菩薩)の位たり。御身も業鏡の内に業力きわまりなし。穴賢(あなかしこ)地蔵尊を信受奉りて速やかに三有の苦患を免れ玉へ。去れば之春造立の像、毎日三度天に登り玉ひて我を守護し玉へり。是慥かに生身の像にてましませば多く百千萬億の大小の分身も此の像に勝り玉ふ利生ましまさず。即ち生身の位にて在すと語りて打ち咲(わらひ)心の内楽玉へる躰にて煙の如く立登玉ふと見て夢覚めけると語られき。其後主上聞召及び玉ひて叡慮に御念誦あり。勅使宣下なかりけるに彼の像、帝の御前に現じ玉へり。奇異に思し召しければ之春に仰せて事の子細を御尋ありて、御衣の御袖を感涙に御潤しありて、忝くも三礼あそばされけるこそ有難き結縁なり。其後、之春卿高野大師に見(まみへ)玉ひて地蔵造立の素意を語り瑞相明白の旨を白し玉ひければ、大師のの玉はく、公忠孝の深切なるによりて此の如きなるに至り玉へり。其の故は天竺には梵字を用ること漢字の如く定まりたる字なし。只響を借り、音に依りて用ふ。されば此の地蔵は中心不動、阿字の本体なりき。

不動にてましまさば漢字の「かん梵字」は明王の種子なり。賀字の「か(梵字)」は地蔵の種子なり。されば始めに賀字を書きて空点(梵字の上に付ける点。諸法皆空の理を示す)を加て漢字の音を成就せり。然らば此の相、柑子の木は漢の音あり。尤も御作の木とするに妙なり。是斯の尊の内證一三昧なり。彼の木にて作り玉へば内外ともに相應し玉へり。争でか信受の手をばむなしくし玉はんやとぞ仰せられける。經に曰、此の菩薩因位の時、光目女と生玉ひて母后の孝養の為に清浄蓮華目如来のみもとにして、大宏の願を発し玉ひてついに菩薩の位に至り玉ひ、地蔵菩薩とぞ白し奉る。又釈尊の授記を受け玉ひて二佛の中間には六道能化の独尊と成り玉へり。抜済世界に偏く、利生刹土に充満し玉へり。されば衆生の不信のみぞ應跡門より引き入れて和光利物の光には漏れ玉ふべからず。真にたのもしき御誓なり。就中母の為に造立し奉らん其の功力尤可なり。彼の形像之春一期の間は現在し玉ひけるが之春退没の後に失させ玉ひて旦那とともに浄土にや入らせ玉へる彼の里は穢悪充満の里なれば出で去り玉ふかとぞ不審はあれども慥かに宣演しがたきものなり。所詮如来の大慈平等の利益なれば彼を捨て此れを取ると云事、更に以てあるべからず、己が信不信の心より善悪を招集むるなり。慎むべし慎むべし。

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