福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

地蔵菩薩三国霊験記 2/14巻の6/16

2024-06-26 | 先祖供養

地蔵菩薩三国霊験記 2/14巻の6/16

六、夢想を蒙る

上総の守藤原時重當國を拝任せらる時、國の政を改め前代の慕虐の事悉く變じて仁厚を以て一國を愛し申されければ當國は云ふに及ばず隣國の民も此の民たらんことを慕ひ商賈も彼の國の市に立たまくぞ思ひける。政治三十年の間如是なれば人皆末世の奇特とぞ申し合へり。斯に本願ありて一萬部の法華經を讀誦せんと思ひ立ちけれども、事大営に及びければ聴宣を飛ばして助成を乞ひ申さる。其の文に云く、宿願久しく中心に蔵す。人有て善心在せば必ず助成を待つ。然れば則ち国内山里同家の諸仙一乗釈衆各々轉經讀誦の力を合して以て宿望を遂げしめ、若し同心あらばかしこみ巻數を送らるべし。但し軸々に施物を捧ぐべきもの也と云々。斯に自界の他方の僧侶經巻の數を捧ぐ事雲の如く集まり星の如くに来る。速やかなからまく欲すれども一万部の功を成辨しけり。時重大に悦びて供養を遂げ畢んぬ。其の夜の夢に相好端厳の僧、手に錫杖を執りされども喜び給ふの御気色にて曰く、汝が修する所の善根吾甚だ喜悦に堪たりと歓喜の御涙を流し玉ひて詠歌を二首示し玉ふ。

「一乗の御法(みのり)あがむる人は皆 三世の佛の 師ともなりけり」

「先立し 人の上をば 聞き見ずや 空しきそらの 烟とぞなる」

此の御歌を讀みて小僧は左手を伸べて時重が手を取りて曰く、汝諸善奉行せよ、善哉善哉と云々。時重謹んで諾し奉り、君は誰人にてか御座と問奉れば、吾は是地蔵菩薩なり。今は娑婆世界の導師なりとて忽然として夢心に失せ玉ふかと思へば覚めぬ。時重無想の新なることを感じて僧侶明眼の人を擇集て如是に事を語る。中に高辨の僧進んで曰く、凢そ諸佛同道の日は我即歓喜して諸佛も亦然なり。来至の機の前にてこそ各別にあれども、本地の内証は悉く法身の一佛なり。衆機万差なれば示現亦た身相を異にす。今法華讀誦の功徳を賛美し娑婆の化師と告げ玉ふ、豈に疑いあるべきやとぞ白されける。時重弥よ信を取て早に佛工を請じて等身の地蔵菩薩を造立し奉りて供養を成す。されば信心に酧(むくひ)利生忽ちに蒙ること偏に生身のごとし。併しながら化他門を開きて不信の衆生をも同じく済度し玉はんとの方便とたのもしくぞありける。

 

 

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