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夏の新刊-『日銀の責任』『シン・男がつらいよ』『ロシアの眼から見た日本』『中国人が日本を買う理由』等

2023-08-10 | こんな本を読んでいます
連休ですので恒例の新刊紹介です。
漸くにしてアベノミクスと異次元緩和が失敗であり、
日本経済衰退をもたらしたと認識されるようになったのは結構なこと。
ただそのために10年も費やす必要があったのか、甚だ疑問です。

ゼロ成長が恒常化してしまった「安い日本」。
急激な少子化の進む中国経済も案の定、ジャパニフィケーションに陥りつつありますが
日本経済の低迷の方が20年以上は早く始まっているので気休めにもなりません。

さて新刊ですが玉石混淆で、少子化や移民問題、ウクライナ問題について
内容の良いもの悪いもの差が激しいので読み手のリテラシーが試されます。


『日銀の責任 低金利日本からの脱却』(野口悠紀雄,PHP研究所)


 → 円安は企業だけ儲けさせ、日本経済を衰退させたことが指標からはっきり分かる。
   GDPが伸びないと賃金は上がらない、至極当然のことなのだが
   リフレ派はこの程度も理解出来ないから常に失敗し下手な言い訳を繰り返す。


『アベノミクスは何を殺したか 日本の知性13人との闘論』(原真人,朝日新聞出版)


 → クルーグマンに散々煽られ、見事に梯子を外されていまった
   猟官リフレ派の底知れないお粗末さをやっと取り上げてくれた本。
   (因に、高齢化した日本に緩和効果は限定的であるともハッキリ指摘されている)。


『シン・男がつらいよ 右肩下がりの時代の男性受難』(奥田祥子,朝日新聞出版)


 → OECDも調査で認めた、日本の男性の辛さは世界でも突出して最悪水準。
   (但しメディアや単純なフェミニストは事実であっても一切見ないふり)。


『教育は遺伝に勝てるか?』(安藤寿康,朝日新聞出版)


 → 親の教育より遺伝の方が何倍も影響大である、
   高所得層は遺伝の影響が強く出るが低所得層は環境の影響が強く出る、
   日本は子供の視点に立とうとするから遺伝的要素が強く出てしまう、
   等々の鋭い研究結果が実に興味深い。


『中国人が日本を買う理由』(中島恵,日本経済新聞出版)


 → 対中国でも完全に「安いニッポン」と化した日本、
   しかし韓国同様に急速な人口縮小と中所得国どまりという二重の罠に陥っている中国は
   これから長く憂鬱な経済停滞を迎え日本への脱出者が増えるのは間違いない。
   (但し、外国人に対する日本の不動産規制が自民党の怠惰によりユル過ぎなのを指摘すべき)


『なぜ少子化は止められないのか』(藤波匠,日経BP 日本経済新聞出版)


 → この辺りからは批判的考察が必要な本。
   現金給付の効果は乏しく、第三子以降支援が殆ど無意味との指摘は正しいが、
   現物給付の優位性を実証した研究には一つも触れないのには驚愕、
   出生率急回復した自治体の事例も分析しないと云う言い訳だらけで保守退嬰の一冊。


『人口亡国 移民で生まれ変わるニッポン』(毛受敏浩,朝日新聞出版)


 → 日本の政財癒着による事実上の移民政策が
   「低度人材受け入れ」になっている現実を完全に無視し、
   真摯な懸念にも誠実に答えようとしない無責任な議論。
   (著者はこの日本にスラムが出現し、欧州のような極右が台頭する惨状を見ることになろう)。


『ロシアの眼から見た日本 国防の条件を問いなおす』(亀山陽司,NHK出版)


 → 佐藤優・鈴木宗男らとは大違いなリアリズムに基づく冷静な分析、
   ロシアは伝統的に相手の弱みにつけこんでくるから
   安倍の北方領土交渉は最初から失敗必至だったことが分かる。
   (著者によれば、北方領土問題の決定権は日本にないという)
   以下の二冊と比較すれば質の高さは歴然としている。

▽ 中国共産党と同じように「即時停戦」を唱えるというロシア擁護の論者二人

『ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音』(佐藤優
・手嶋龍一,中央公論新社)


▽ EU危機以来ずっと予言が外れ続けているトッド、最後の最後に「ロシアも悪い」と書く姑息な議論

『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』(エマニュエル・トッド,朝日新聞出版)




『アフターChatGPT 生成AIが変えた世界の生き残り方』(山本康正,PHP研究所)


 → 著者らしいシンプルで活字の大きい解説書、
   時系列に纏めており各企業の動きを整理してるのは美点で
   同時期に出た文春新書より遥かにお勧めできる。



『「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史』(辻田真佐憲,講談社)


 → 自称保守がいかに日本の近現代史を理解していないかがよく分かる。
   自民党の保守派が賞揚する戦前日本は、神話と嘘に塗れていた。


『世界を動かした日本の銀』(祥伝社,磯田道史・近藤誠一・伊藤謙ほか)


 → 最後にこちらを。驚きの本格派で面白い、
   磯田道史氏による「世界を動かした日本の銀」が特に秀逸。

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