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盛夏の新刊-『ハマスの実像』『縮んで勝つ』『検証 大阪維新の会』『アファーマティブ・アクション』等

2024-08-12 | こんな本を読んでいます
連休には恒例ながら新刊紹介です。

米国ではトランプ銃撃事件でほぼトラ確定かと思われましたが
トランプの相変わらずの失言連発でカマラ・ハリスが支持率急上昇、
新刊は事態の変転に追いつけておらず出遅れている状況です。

他方、日本では自民の裏金問題に隠れてはいますが
維新の会に失態続出で迷走、与野党とも悪しき混沌が続く。。

さて前回は「女性研究者や女性著者のバイアスの強さが気になった今日この頃」
と書きましたが、今回は男性ジャーナリストや男性識者のバイアスも目立ち。
宜しくない意味で男女平等な新刊が多くなったかなと。。


『ハマスの実像』(川上泰徳,集英社)


 → ハマスについて現時点で最も詳細で良質なレポート、
   腐敗したファタハよりも人権上の問題が大きいハマスが西岸地区でも強く支持されているのが現実である。

   但しガザ地区の未成年が自ら殉教を志願するという絶望的なガザの状況に対して
   楽観的な著者の認識は大いに疑問であり、ハマスもイスラエルも
   手段を選ばず徹底的に戦う点で原理的によく似ていると考えるのが妥当だ。
   ハインゾーンの冷徹なジェノサイド研究を参照すべき。


『アファーマティブ・アクション-平等への切り札か、逆差別か』(南川文里,中央公論新社)


 → ごく一部のエリート校を除いて既に平等に近付いておりアメリカ人の多くが関心を失った差別是正措置、
   庶民から遊離する差別是正派の「敗北宣言」に近い内容である。
   (差別と格差の違いは何かという根本的な論点からも逃げている)


『縮んで勝つ ~人口減少日本の活路~』(河雅司,小学館)


 → タイトルに偽りあり、提言されている処方箋は「勝つ」どころか縮小均衡による敗北そのものである。
   巨額の資産を持つ高齢層への過大な公的給付を現役世代の現物給付に移転するのが
   少子化対策として効果最大であることは既に研究で判明しており、バブル世代の著者は責任重大の筈。


『検証 大阪維新の会 ――「財政ポピュリズム」の正体』(吉弘憲介,筑摩書房)


 → 維新が自治体を牛耳るようになっても大阪の経済低迷は変わらず
   所詮は財政ポピュリズムでしかない、という維新の会の実態を鋭く衝いた。
   (因に、当書では触れていないが大阪は低出生率も一向に改善していない)


『日本企業のための経済安全保障』(布施哲,PHP研究所)


 → 布施哲氏の待望の新刊で強くお薦めできる、
   米国が日本の代わりに中国企業を排除してくれているが
   「デジタル小作人」たる日本が上納金を払わされて
   赤字を増やしている等々、鋭い分析が流石である。


『トランプ人気の深層』(池上彰,宝島社)


 → これが出た直後にカマラ・ハリスの支持率上昇が伝えられた間の悪い一冊、
   池上や前嶋、中林らは概ね妥当な見解なのだが
   識者の中で最も多弁な佐藤の見解は精度が低く
   中国よりイスラムが重要などとしてしまっている。
   (安全保障では米国がより重要になり、経済面で最重要になるのがインドなのは学生レベルでも分かる筈)


『日本人の知らないベトナムの真実』(川島博之,扶桑社)


 → 投資はしてくれても韓国は嫌い、ベトナム戦争での忌まわしい記憶は根深い。
   よく知られているように腐敗が深刻な一党独裁社会ではあるが、
   親日国なのに直接投資が少ない日本企業の奮起を求めたい。


『海の城 海軍少年兵の手記』(渡辺清,KADOKAWA)


 → 貴重な復刊、旧日本軍の悪しき文化を知らない自称保守やネトウヨは
   この剥き出しの真実をその一端なりとも知るべきである。

追記:知覧に行きたいと発言した早田選手も、「国のため」という言葉が
   当時どのような意味を持っていたか理解するため読んで欲しい一冊である。
   『日本軍兵士』や『沖縄スパイ戦史』、『レイテ戦記』等はショッキングだろうから。


『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(勝俣範之,KADOKAWA)


 → これは今年初めに出ていた本、
   誠実な著者の人柄が窺える実用性な良書。


『フランス 26の街の物語』(池上英洋,光文社)


 → 最後に連休に相応しいこちら。
   とにかく写真が美しく、素晴らしい景観であることが一目で分かる。

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