恒例の新刊紹介です。
ウクライナ本のラッシュが過ぎて生成AI関連はやや空回り気味、
中々次のテーマが見えてこない状況ではありますが
玉石混淆の中でも良書はあります。
また、欠点があっても学べる本もあり
例えば『ジェンダー格差』は経済学でも強いバイアスがあることが分かるし
今年のノーベル経済学賞に輝いたゴールディン教授の研究の重要性を
授賞前に日本に紹介しているのは高く評価できます。
→ ジャベリンのような限定的な支援しかないウクライナの善戦が想定外だったなど
当初の見方が修正されてゆく過程を正直に述べているのが誠実で
見通しの誤りを何故か認めないトッドや佐藤より的確な視点、
(文春はあちらの本のオビに「予言通り」など不誠実なセールストークを載せるべきでないと思う)
矢張りウクライナ侵攻は世界大戦ではなく朝鮮戦争に近いことが分かる。
→ レポートとしては妥当な水準だが、
デジタル化とリスキリという凡庸そのものの処方箋が全然なってないし
事例として挙げられている日立はグローバルでは競合企業に勝てていない。
北欧並みの女性就労で日本のGDPは50兆円近く増えると言われているし、
現役世代から搾取した年30兆円規模の高齢者向け公費給付が
少子化と低成長をもたらしている現実を理解すべき。
→ 漸くドグマではなく実証的なジェンダー研究が出始めてきた、
柔軟な働き方を選好したり長い通勤時間を嫌うといった
女性自身の選択により所得格差が広がる事実を指摘した功績は大きい。
但し経済学研究でもジェンダー関連は実証よりドグマの強さが気になる。
「わずかな事実」が偏見に繋がると決めつけておきながら、
当書の実証研究も「わずかな事実」程度で結論を出している箇所が複数ある。
『貧困専業主婦』を見れば分かるように著者が思うより日本のジェンダーは特殊だ。
世界的に見て家事育児時間が突出して長い日本女性のバイアスなど引き続き研究を望みたい。
▽ 高学歴の上位10%層だと、同性間の格差に他人事という点ではこちらとよく似ている
→ 日本は元々離婚大国だった、フェミニズム紛いのイデオロギーの欺瞞と
自己矛盾を暴く現実的な本だが男女のミスマッチは減らないと思う。。。
→ 育児支援により結婚できない層がより貧しくなるとの指摘だけは正しいが
勤労と高負担を強要する厳しい北欧の雇用政策を理解してないのが重大な欠点。
スウェーデンとフィンランドの出生率格差はなぜ生じたか、
奈義町や下條村はなぜ明石市より高出生率なのかこの本の理論では説明できない。
→ GAFAMの巨額ロビー資金の威力は凄まじい、
日本政府ごときは簡単にひねられて向こうのビジネスを公費で助けてしまう。。
(その走狗になっている日本人もかなりいそうだ)
→ これは春に出されたものだが内容の心理バイアスが興味深い。
ソーシャルジャスティスとミーイズムを混同しているきらいがあり
自分自身の強固なバイアスに無頓着で「社会を診る」と上から目線。。
(米国の超格差社会や宗教原理主義、拝金的な米国医療の病巣には沈黙して日本社会批判。。)
米国でも日本と同様に女医が負担重い診療科を避けると指摘する筒井医師の指摘の方が鋭い。
→ 過保護も過干渉も放置も全て有害という説得力ある分析、
但しケーススタディの分析は短絡的なものが散見される。
→ 日本は主要国の中で対内投資が最低、しかも非正規雇用は最も多いから
経済低迷に陥ったことが数値から明瞭に理解出来る。
日本企業が生産拠点を海外移転すると生産性が悪化する、
という説は現実と合致しており今後の実証研究に期待したい。
→ 世界はインフレ、「安いニッポン」では回転寿司すら買い負け始めており
国内でのガラパゴス商習慣も奇妙なものばかり(魚介類なのに欠品へのペナルティ等)。
→ 最後にこちら。
歴史に疎い若年層や自称保守に向いており、
史実に反しまくっているキングダムより遥かに良い。
中国の歴史に根付いた戦略的発想や冷酷非情な政治文化を理解できる。
ウクライナ本のラッシュが過ぎて生成AI関連はやや空回り気味、
中々次のテーマが見えてこない状況ではありますが
玉石混淆の中でも良書はあります。
また、欠点があっても学べる本もあり
例えば『ジェンダー格差』は経済学でも強いバイアスがあることが分かるし
今年のノーベル経済学賞に輝いたゴールディン教授の研究の重要性を
授賞前に日本に紹介しているのは高く評価できます。
![]() | 『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』(小泉悠,文藝春秋) |
→ ジャベリンのような限定的な支援しかないウクライナの善戦が想定外だったなど
当初の見方が修正されてゆく過程を正直に述べているのが誠実で
見通しの誤りを何故か認めないトッドや佐藤より的確な視点、
(文春はあちらの本のオビに「予言通り」など不誠実なセールストークを載せるべきでないと思う)
矢張りウクライナ侵攻は世界大戦ではなく朝鮮戦争に近いことが分かる。
![]() | 『中流危機』(NHKスペシャル取材班,講談社) |
→ レポートとしては妥当な水準だが、
デジタル化とリスキリという凡庸そのものの処方箋が全然なってないし
事例として挙げられている日立はグローバルでは競合企業に勝てていない。
北欧並みの女性就労で日本のGDPは50兆円近く増えると言われているし、
現役世代から搾取した年30兆円規模の高齢者向け公費給付が
少子化と低成長をもたらしている現実を理解すべき。
![]() | 『ジェンダー格差-実証経済学は何を語るか』(牧野百恵,中央公論新社) |
→ 漸くドグマではなく実証的なジェンダー研究が出始めてきた、
柔軟な働き方を選好したり長い通勤時間を嫌うといった
女性自身の選択により所得格差が広がる事実を指摘した功績は大きい。
但し経済学研究でもジェンダー関連は実証よりドグマの強さが気になる。
「わずかな事実」が偏見に繋がると決めつけておきながら、
当書の実証研究も「わずかな事実」程度で結論を出している箇所が複数ある。
『貧困専業主婦』を見れば分かるように著者が思うより日本のジェンダーは特殊だ。
世界的に見て家事育児時間が突出して長い日本女性のバイアスなど引き続き研究を望みたい。
▽ 高学歴の上位10%層だと、同性間の格差に他人事という点ではこちらとよく似ている
![]() | 『女性不況サバイバル』 |
![]() | 『恋愛結婚の終焉』(牛窪恵,光文社) |
→ 日本は元々離婚大国だった、フェミニズム紛いのイデオロギーの欺瞞と
自己矛盾を暴く現実的な本だが男女のミスマッチは減らないと思う。。。
![]() | 『「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義』(大西広,講談社) |
→ 育児支援により結婚できない層がより貧しくなるとの指摘だけは正しいが
勤労と高負担を強要する厳しい北欧の雇用政策を理解してないのが重大な欠点。
スウェーデンとフィンランドの出生率格差はなぜ生じたか、
奈義町や下條村はなぜ明石市より高出生率なのかこの本の理論では説明できない。
![]() | 『国家は巨大ITに勝てるのか』(小林泰明,新潮社) |
→ GAFAMの巨額ロビー資金の威力は凄まじい、
日本政府ごときは簡単にひねられて向こうのビジネスを公費で助けてしまう。。
(その走狗になっている日本人もかなりいそうだ)
![]() | 『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(内田舞,文藝春秋) |
→ これは春に出されたものだが内容の心理バイアスが興味深い。
ソーシャルジャスティスとミーイズムを混同しているきらいがあり
自分自身の強固なバイアスに無頓着で「社会を診る」と上から目線。。
(米国の超格差社会や宗教原理主義、拝金的な米国医療の病巣には沈黙して日本社会批判。。)
米国でも日本と同様に女医が負担重い診療科を避けると指摘する筒井医師の指摘の方が鋭い。
![]() | 『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』(出口保行,SBクリエイティブ) |
→ 過保護も過干渉も放置も全て有害という説得力ある分析、
但しケーススタディの分析は短絡的なものが散見される。
![]() | 『世界で第何位?-日本の絶望 ランキング集』(大村大次郎,中央公論新社) |
→ 日本は主要国の中で対内投資が最低、しかも非正規雇用は最も多いから
経済低迷に陥ったことが数値から明瞭に理解出来る。
日本企業が生産拠点を海外移転すると生産性が悪化する、
という説は現実と合致しており今後の実証研究に期待したい。
![]() | 『回転寿司からサカナが消える日』(小平桃郎,扶桑社) |
→ 世界はインフレ、「安いニッポン」では回転寿司すら買い負け始めており
国内でのガラパゴス商習慣も奇妙なものばかり(魚介類なのに欠品へのペナルティ等)。
![]() | 『横山光輝で読む「項羽と劉邦」』(渡邉義浩,潮出版社) |
→ 最後にこちら。
歴史に疎い若年層や自称保守に向いており、
史実に反しまくっているキングダムより遥かに良い。
中国の歴史に根付いた戦略的発想や冷酷非情な政治文化を理解できる。