-写真の部屋-

奥野和彦

腕を磨かんとす。

2018-07-04 21:04:57 | 写真


先日も朝起きたら
明日から雨だから今日は釣りにでも言って来なさいと賢妻が言う。
おかずにするからヤマメを釣って来なさいと。
結果、残念ながら7月に入っての釣りは厳しく
型は良かったが持ち帰りは2匹だけ。
ウグイは嫌というほど釣れて
鮎釣りに来ていた老夫婦が手を止めて
自分の釣りを見に来るほど。



「あなた、上手いですねえ。いやぁ見事だ。」
「そんなことないです、ヤマメは釣れて来ませんから」
ウグイ釣りをそんなに褒められても恥ずかしいばかり。
でも、本当に1投すれば1匹釣れてくる時間があって
ヤマメが釣れた時の練習に腰に差した手網で
ホイホイと受けていたので
それを褒めてくれたのだろう。はい、自慢しております。



敗因を考えて見るに
晴れ続きで水が少なく、その上澄んでいて魚の警戒が強い。
警戒が強いとこに来て禁漁が解けたばかりの
鮎釣りの釣り人が一斉に川に立ち込み
ヤマメがビビっている。
夏はそんな風で、ヤマメ釣りは厳しいのだ。



今から25、6年前
その日もあまり釣れずに
命の洗濯だけして夕方の蝉時雨の中
川沿いの自販機のそばで休んでいると道の向かいの家から
ランニングとステテコで出てきたおじさんが、
鯉かなんかを釣るようなぶっとい竿に、
15mぐらいこっちから見てても良く見えるぶっといミチイト。
その先に何か黒い毛玉のようなものが付いている。
それを、川沿いになる県道の上から3〜4m下の川面に向けて垂らし、イワナを釣り上げた。
近所のおじさんも2人煙草を吸いながら、そばに寄って世間話をしながら見ている。
日常の茶飯事。



また、釣り上げた。

おじさんが町から来た若僧をちらっと見て
ニカッと歯の無い口で笑うので
これは大変、そばに行って見せてもらわないと。

イワナが居るような上流ではないのだけれど
岩と岩の間にその毛玉をチョンチョンとすると
魚がのそっと出てきてのそっと咥える。

「あんまり釣るとよ、明日も楽しもうと思ってもよ
ダメだんべ。今日はもうこれでいい。」

プラスチックのバケツに入れたイワナがビタビタっと時折暴れて
おじさん余裕で煙草をふかす。

その毛玉を見せて、おじさん!

それは袖バリみたいにごく普通の釣り針に
カラスかなんかの黒い羽根が黒糸で縛り付けてある程度の代物で
流行り始めていた和式毛鉤の釣り方「テンカラ」で
紹介される毛鉤より、粗雑で黒いゴミみたいだった。
本物っぽくて漁師っぽくてカッコ良かった。
テンカラ釣りではハリスで水を叩くと魚が警戒して出ないとか
流す距離や秒数にコツがあるとか
毛鉤も色や形を考えたりするけれど
おじさんの毛鉤釣りは糸を水につけないから糸は丈夫でいいし
警戒されないし、それで釣れれば良いおじさんには理にかなっている。

現在、テンカラ釣りもしなくは無いが
テンカラ釣り氏ばかりが川にいると
違うことをしたい天邪鬼なので
今年は餌釣りの腕を磨こうと修行中。