英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

相棒 season18 第20話(最終話)「ディープフェイク・エクスペリメント」

2020-03-19 22:06:30 | ドラマ・映画
薄い内容を2時間強に引き伸ばしただけだったので、この上なく退屈でつまらなかった……

1.ディープフェイクという興味深い題材だったが……
“ディープフェイク”……動画のある人物の顔や体の動きを違う人物と合成し、あたかも本人が話したり動いているように見せる技術
 悪戯やジョークで使用し、非常にインパクトの強い動画になるが、題材となった人にとっては甚だ迷惑で、傷ついたり損害を被ることもありそうだ。精巧に作られれば、国際紛争に発展する危険性もある。
 ドラマでも潔白な人を陥れるエピソードや、本編で使用されたようにアリバイ工作にも用いられそうだ。しかし、これが横行すると、“何でもあり”状態となり、ドラマそのものが破綻してしまう。
 現に、映像解析技術の進歩で、刑事ドラマが味気ないものになりつつある。例えば、『科捜研の女』でマリコが「拡大鮮明化」と言葉を発し、ワンクリックで、ぼやけていた顔が鮮明になり人物を判別できたり、『歩容認証』で人物を判別したり、Nシステムなどで犯人を追尾することができている(『科捜研の女』『絶対零度』)

 横道にそれてしまったが、今回の場合、「ディープフェイクが精巧で、偽造であることが認められない」となると始末が悪い。ドラマでは掘り下げられなかったが、「AがBを殺害している動画(byディープフェイク)」と「その動画の時刻、Aと会っていた」という証言があったとしたら、どちらを信用するのだろうか?(その他の目撃証言や、その時刻前後のAの所在の確認をして立証できるように思うが)。
 それはともかく、今回、ディープフェイクに振り回される捜査陣を描き、「映像が絶対的な根拠にはならない」という主張が感じられた。

 過去のドラマ(UFO検証などのドキュメント番組)で、画像トリックは多数思い浮かぶ。『名探偵コナン』では、1年前に写真を何枚か撮っておいて、犯行当日にそのカメラを使用して撮影して、1年前の画像を犯行当日のアリバイにしようとした……他にもいろいろあるが、どこかに矛盾が存在したり、デジタル的に偽造しても痕跡が残ったりしてしまう。それらの矛盾を指摘するのが、画像トリックの醍醐味である。
 しかし、今話の鬼石美奈代(坂井真紀)の技術は精巧で、青木が疑いの目を持って検証しても、偽造であることを指摘できないものだった。光の反映具合の不自然さや動きのぎこちなさなど生じそうなものだが、それらを補正するプログラミングがされているのかもしれない。
 《彼女の技術が完璧だった》とするのも、ドラマとしてはあり得る。《それを、右京がどのように打破するのか?》と期待したが、鬼石と内閣情報調査室との関係や犯行時の鬼石と被害者・桂川(村上新悟)のやり取りの推理を披露するだけで、ディープフェイクを覆すような物証は無し!

2.“推理力減退症候群”
 確かに、第1話で薬でラリッたり、いかにも危なそうな爆発物のようなものを不用意に開けたりと“右京らしくない迂闊さ”が多かったような今期だったが、衰えたとか“花の里欠乏症”と周囲から心配されるほどではなかった。
 オールキャストを絡めたかったのかもしれないが、最終話を通して“推理力減退症候群”ネタに終始して、内容をさらに薄めることになってしまった

3.捜査らしい捜査は無し
 「99」という謎のメッセージが、「救急車」の言いかけであろうという推理以外、良いところのなかった捜査一課(青木のディープフェイクにも踊らされたし)。
 捜査一課にしろ、特命係にしろ、鬼石の偽装アリバイ(ディープフェイク)を聞き込みや公共画像や一般人の映像との矛盾点を見出すなどして、崩してほしかった。

4.天才かもしれないが、馬鹿で馬鹿者(愚か者)だった
 桂川を殺害した動機は、嫉妬心よりも自分のディープフェイクが警察を欺けるかを試したかったからなのだろう。
 技術の最先端を走り続けることに疲れて、自分の技術を披露する頃合いと判断したのかもしれないが、人の命を奪う罪や、研究を支援してくれた周囲を裏切る重大さについて、全く考えが及ばない馬鹿者であった。

5.ディープフェイクの開発援助した内閣情報調査室、あるいは官邸(官房長官)を糾弾しない右京
 ディープフェイクを見破る技術なら理解できるが、そのものを支援していたように思えたが、いったい何の目的で?
 ディープフェイクは悪事にしか使えないように思えるが……
 あからさまに対決姿勢を見せなかったのは、来シーズンのことを見据えてか?

6.新たな登場人物
➀「こでまり」の女将・小出茉梨(森口瑤子)
 政界に顔が利き(官房長官とも懇意)、右京たちの話し相手になりうるだけの器量の持ち主であるようだ。
 事件に巻き込まれたというような偶然ではなく、甲斐(石坂浩二)の紹介というのが残念。今回も「官房長官~小出茉梨~ディープフェイク~鬼石」のラインが繋がった。

②内閣官房長官・鶴田(相島一之) 
 今後、特命係と敵対しそうな大物ではあるが、相島さんには“小者感”が漂いすぎて(私の主観です。申し訳ありません)、キャスティングに不満を感じてしまう

③内閣情報調査室の柾庸子(遠山景織子)…今後登場するかは不明
 鬼石のディープフェイクにより、桂川との性行為の映像を捜査員の脳裏に認識させられてしまうという大迷惑を被ってしまった。
 それでも、内調としての職務を全うする意志の強い女性。鬼石を匿い、二人で食事をする際、料理の腕を自慢する鬼石に対して、「刃物を持たせたら、ロクなことしないでしょう?」と遣り込めたのは面白かった。

④内閣情報官・栗橋(陰山泰)
 なかなかのやり手。官房長官の手足となって、いろいろ暗躍。

7.その他
 桂川の遺体を発見した秘書。理路整然とした説明をしていて、《何か、裏があるのかも》と思ったが、それっきりだった(笑)

“推理力減退症候群”ネタに終始し、人間関係や人間性・行動論の推理が多く、クライマックスの対峙シーンもディープフェイクを打ち破るような物証もなく推論を披露しただけ。50分で十分な内容で、つまらなかった。残念。
 

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【ストーリー】番組サイトより
右京が“推理力減退症候群”を発症!?
謎の数字とフェイク動画に捜査は混乱
権力者の思惑が絡む難解な事件の真相とは?


 そんな中、元東亜ダイナミクス社長の桂川(村上新悟)が、自宅寝室で殺害される事件が発生。背中から刺された傷が死因だったが、なぜかスマホの音声認識アプリが立ち上げられていて、『99』という謎の数字が残されていた。さらに、現場のパソコンから発見された、桂川と女性の“ベッド動画”が波紋を呼ぶ。問題の女性は、顔認証から内閣情報調査室の柾庸子(遠山景織子)と判明したものの、政府直轄組織の人間ということで、警察としても配慮せざるをえなかった。
 事件に興味を持った右京と亘は、現場となった桂川のマンションを訪れるが、そこには青木(浅利陽介)の姿が。上層部から“特命係一派”とみなされ、捜査から外されたことに反発して、協力を思い立ったらしい。右京は、青木から得た情報や現場の状況から、問題の映像にある疑問を抱く。いっぽうその頃、事件と何らかの関係があると思われる内閣官房長官の鶴田(相島一之)は、懇意にしている芸者・小出茉梨(森口瑤子)から悪巧みを指摘され…。
 翌日、伊丹(川原和久)たち捜査一課は、桂川をスポンサーとして最新の映像技術を研究していた鬼石美奈代(坂井真紀)という大学の特任教授から話を聞いていた。しかし、飄々とした彼女にはぐらかされるばかりで要領を得ない。そんな中、「週刊フォトス」が桂川と柾庸子のあるスクープ映像を入手。監察官の大河内(神保悟志)の指示で特命係がその動画の押収をすることとなり…。

解決の鍵は“動かぬ証拠”である映像!?
事件の背後には暗躍する政府高官の影が…
スランプ中(!?)の右京が、日本の闇と対峙する!


ゲスト:坂井真紀 相島一之 遠山景織子 村上新悟 森口瑤子

脚本:輿水泰弘
監督:権野元
コメント (6)
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