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英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

第72期名人戦 第4局 その4「“盲点の金打ち”と“必殺手”」

2014-05-27 21:29:31 | 将棋

 森内名人が△5四歩と玉の退路を広げ、羽生三冠がそうはいきませんよと▲6四歩と垂らす。

 玉の安全度で言えば、5三に逃げる余地ができた分だけ後手の得。
 しかし、攻めの足掛かりができ、しかも挟撃体制を作れたのは先手の得。
 微妙な損得計算で、「この後の指し手次第」と言うしかないのかもしれない。
     (……と、前記事で述べた)

盲点の金打ち
 森内名人は△1二角。龍取りだが遠く6七を睨んでいる。
 しかし、▲2二龍と王手でかわされ△3二歩と後手を引く。ここも損得は微妙。
 ここで▲2五桂が遊び駒の活用で味がいいと思ったが、次に▲3三桂成と迫っても△5三玉とかわされると、却って玉との距離が遠くなってしまうのか。
 そこで、香を補充しつつ角取りの▲1一龍。
 が、後手玉から龍筋を外すうえ、次に角を取った位置がまずく、王手龍取りの筋がある。
 案の定、△6七銀と打ち込まれてしまった。
 1二の角を取ると△7八銀成から△3四角の王手飛車がある。▲4五角と合わせる手はあるが、そこでさらに△6七金と打ち込む手もある。
 また、▲1二龍と角を取った時、後手玉への響きが薄いので、△5八銀不成~△6七歩成という手段も有力だ。

 やはり、負けか………と思ったところに▲4一金!


 一段目に金を打って、玉を三段目に逃がす………
 ………「王手は追う手」の典型的な例で、敵陣一段目の金は、本来六か所の利き筋のうち三か所にしか利いていない。
 三段目に逃走路のない玉を追いかける「尻金」は有効だが、通常は読みから除外してしまう「筋悪の手」だ。
 しかも、先手にとってなけなしの金だ。
 「有り得ない手」(▲4一金)を見て、思考が停止した。

 ところが、しばらく見ていると、この金打ちは「常識を超えた巧手」であるように思えてきた。
 上述したが、▲1二龍と角を取ると、王手龍取りで取られなくても、龍の後手玉への響きが薄い。そこで、龍の利きがあるうちに▲4一金と寄せの足掛かりを築いておこうというのだ。4一の金は三か所にしか利いていないが、4二と5一への利きが非常に大きいのだ。
 金を消費しても、龍が取られても、1二の角を取れば補える。
 何と柔軟な発想………盲点の金打ち死角から飛んできた金打ちだった。



必殺の△8七飛成
 ▲4一金(第7図)以下、△5三玉▲1二龍△3四角▲4五角。
 複雑で、もう訳が分からない。
 でも、この難解な終盤は、形勢はともかく“羽生ペース”である。難解な終盤戦をきっちり読み切って、久保八段に競り勝った2007年度の王座戦、王将戦を思い出す(2年後の王将戦では久保棋王に雪辱されている)。
 それはともかく、棋譜速報で局面を追いながら、分からないながらも羽生三冠の勝ち筋を探していた。……と、嫌な手が見えた。△8七飛成だ。


 ええと、▲8七同金に△1二角と龍を取られて、▲同角とすると……△7八飛で詰んでしまう。
 ≪あれ?まずいんじゃない…≫
と思っていると、モニターの後手の飛車が動いて△8七飛成!

 いや、きっと大丈夫なはず。
 ▲8七同金△1二角に▲8八玉で堪えているか。
 もともと、△8七飛成で飛車をもらっているうえ、その前にも1二の角も取っている。飛車を取られても採算は取れるはず……。(続く

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コメント (2)
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