カンボジア経済

カンボジアの経済について、お堅い数字の話から、グルメ情報といったやわらかい話まで、ビジネス関係の方にお役に立つブログです

日本からの投資誘致に向けて

2008年09月01日 | 経済
日本人会のご理解・ご了承も頂きましたので、日本人会会報誌「にほんじんかい」第46号に掲載されました「カンボジア事情第13回:日本からの投資誘致に向けて」を転載させていただきます。著者は、カンボジア経済財政省の鈴木博上席顧問エコノミストです。
上の写真は、日本からの援助(円借款)で整備が進むシアヌークビル港コンテナターミナルです。

「日本からの投資誘致に向けて」

 カンボジアのここ数年の経済発展はまさに順調でしたが、引き続き発展していくためには新たな「成長のエンジン」が重要になっています。最も重要なエンジンは、外国からの直接投資であると考えられています。多くの途上国、特にアジアでは、日本は最大の投資国であることが多いのですが、カンボジアでは残念ながら、日本からの投資はこれまで周辺国に比べると少ないものでした。そこで、日本からの投資誘致に向けて、カンボジアと日本は政府・民間をあげて、力を合わせて努力を重ねていますので、皆様にご紹介したいと思います。

1. 日本企業の3大不満
 途上国に投資を考えている日本企業の方々に伺うと、投資環境について3つの不満があると言われています。それは、①情報の不足、②インフラの不足、③法律・制度の不備です。

2. 情報の不足
 これだけ情報社会になり、インターネットにも情報があふれているようですが、企業が海外への投資を決断するのに、本当に必要な情報を、簡単かつコストをかけずに収集するのは容易ではないようです。
 そこで、カンボジアと日本は協力して、日本語の「カンボジア投資ガイドブック」を作成しました。このガイドブックは、ウェブからも見ることが可能です。また、東京やバンコクで「カンボジア投資セミナー」を行っています。今年は、8月29日に東京の国際協力銀行で開催されます。また、バンコクでも9月11日にバンコク日本人商工会議所主催で開催されます。
 また、最近は投資ミッションも頻繁にカンボジアに来られています。今年の2月には、日本アセアンセンター主催で40名を越える大ミッションが来られて、ソクアン副首相にもお会い頂きました。この日本アセアンセンター主催カンボジア投資ミッションは人気が高いとのことで、本年9月には、再度来られるとのことです。

3. インフラの不足
 カンボジアに進出される企業の方々の心配は、インフラの不足です。
 まずは、電力ですが、カンボジアには、まだ大型の発電所も無く、料金も高いといわれているため、自家発電設備や、工業団地内の発電設備を必要としています。カンボジア政府は、民間活力を活用してIPPによる発電を奨励していますが、満足のいく段階に行くには、まだもう少し時間が必要なようです。
 運輸については、かなりの改善が図られています。主要港のシアヌークビル港は、円借款によりコンテナターミナルも整備され、今後も拡充される計画です。プノンペンと各地を結ぶ国道は、一桁国道(国道1号線~7号線)については舗装・改良が進んでいます。ホーチミン~プノンペン~バンコクを結ぶ大動脈となる「第2東西経済回廊」としての役割も大いに期待されます。
 上水道については、プノンペンでは日本の協力によって、これまでも整備されてきており、今後も順次拡張されていく計画です。

4. 法律・制度の不備
 カンボジアは、内戦によって多くの法律・制度が失われてしまいました。日本の協力によって基本法、裁判制度等が、順次確立されてきました。また、日本をはじめとして、世界銀行等の国際機関や各国も協調して、民間セクター開発のための法律・制度改善という課題にも取り組んできています。特に、日本企業の方が進出を検討されやすい「経済特区」については、円借款でシアヌークビル経済特区を開発するのにあわせて、法律・制度の整備にも協力しています。

5. 今後への期待
 隣国のベトナムは、いまや日本企業の進出先として、大変重要な国となっていますが、2000年ころまでは、今のカンボジアと同様に、日本からの投資が来ず苦労していました。それを、日本・ベトナムが協力した「日越共同イニシアティブ」によって、投資環境を整え、円借款によりインフラを整備して、今の日本からの活況な投資に繋げています。カンボジアも、タイ、ベトナム等の近隣諸国の後を頑張って追いかけていますので、日本からの投資が近い将来、増加することを大いに期待しています。

日本アセアンセンター主催「カンボジア投資環境視察ミッション」


コメント
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