山野草を楽しむ

育てて楽しむ山野草

秘境ムスタンの植物

2005-07-02 | 山野草
book


春に買った本を今頃になって読んでいる。
「ムスタン」なんていうと、「禁断の王国」というような表現でNHKの取材班なんかが出てきそうだが、長いこと外国人が近寄れなかった地域らしい。

この本は、1988年から5年計画で実施されたネパール王国ムスタン地域の植物調査の様子を紹介したものである。
調査記録そのものではないが、興味のある植物もいろいろ紹介されている。

ヒマラヤの植物は日本の植物とつながりがあり、また地中海につながる植物相もヒマラヤのどこかにあり、その境界の有力地がムスタンと推測されているそうだ。
そういったこともあって、このムスタンの植物は植物学上、非常に魅力的なんだろう。

なにしろ容易に近づけない地域であり、標高も4,000m~5,000mである、たいへんな苦労もあっただろうが、植物の調査という強い欲求・興味が苦労をものともせず、このようなすばらしい成果に結びついたと思う。

この調査は「財団法人 緑育成財団」というところがスポンサーとなっている。
この財団は、知る人ぞ知るホームセンターコメリが母体であり、花や緑に関する助成金額はすでに7億円を超えているとのことである。

コメリといえば、園芸コーナーの山野草関係の販売品には、多少言いたいこともあるが(たとえば、中国産アツモリとか黄色のタイリントキソウとか)
それはさておき、こういった事業に資金を提供することはすばらしいことだと思う。

ムスタンの植物を網羅する「ムスタン植物誌」は、この調査の目的そのものであって、その出版をめざしての研究もかなり進んできているそうである。

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「ヒマラヤに花を追う-秘境ムスタンの植物」
著者:大場秀章、五百川裕
監修:財団法人 緑育成財団
発売:八坂書房 定価1,800円
2005年1月初版発行
ISBN4-89694-801-7