世界一周タビスト、かじえいせいの『旅が人生の大切なことを教えてくれた』 

世界一周、2度の離婚、事業の失敗、大地震を乗り越え、コロナ禍でもしぶとく生き抜く『老春時代』の処世術

一本の電話から

2010年07月24日 | 人生
ちょうど出かけようとしている、お昼前だった。


電話が鳴った。


受話器を取ると、女性の不安げな声が。

「あのー、住み込みの従業員は募集してませんか」


宿を経営していると、いろんな事情を抱えた人がやってくる。


以前は、居候と呼ばれる人が入れ替わり立ち替わりで常時数人いたこともあった。


夏になると、よくそういう人からの問い合わせがきた。


今回もその口かと思った。


だが、少し様子が違った。


ボクの訝(いぶか)しさを察したのか、

彼女は、自分のほうから事情らしきことを話し出した。


「岡山に住んでいたんですけど、

もともと熊本出身で、帰ってきたんですけど

当てにしていたところに住めなくなって・・・」


「いつからご希望ですか?」

「今日から・・・」


焦燥感が感じられた。

通常は、履歴書を持ってきてもらって、面接をして、となるのだが。


「今日は今から出かけなければならないので、明日ならいますけど」

「今日、寝るとところがなくて。

実は、犬が一緒なんです。柴犬が2匹」


今日から犬も一緒に住める所でないと、と懇願気味に言う。



ボクは、困ったなーと思いつつ

何とかしてやらなければと、のっぴきならないものを感じていた。



「今夜9時ごろまでには帰りますけど」

「それまで家の前で待たせてもらってよろしいでしょうか」

「かまいませんけど」


彼女は、赤岩美佐と名乗った。

連絡先を聞くと、

かけてきた携帯は、借りたもので、自分は持っていないという。


不安を抱きながら、ボクは出かけた。

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