人間以外のものたちにも
もっと優しくしてください
同じ時を生きているのだから
朝が来れば 夜も来るし
生まれて そして 死んでいく
私が土になったら
お花たちがそこから咲いてください
(イルカ「いつか冷たい雨が」より)
大学院生の頃、クリスマスの季節になると楽しみにしていたことがあった。
それは、渋谷公会堂でのイルカコンサート。若い方でも、「なごり雪」や「まあるいいのち」は知っているかと思う。「いつか冷たい雨が」は、イルカがコンサートの最後に必ず歌ううた。
5年間の大学院時代で、毎年、ひとりぼっちでイルカコンサートに出かけた。研究室の人たちには内緒で。渋谷駅を降りて、若者で賑わうハチ公前を出て、雑踏のセンター街を抜け、ハウスマヌカンのスペイン坂を上る。西武デパートの横を右手に折れて、公園通りに入り、NHK方面に上って、左手に渋谷公会堂。
イルカの歌が好きになったのは、学部の頃のセンパイの影響だ。慕っているセンパイの好みのミュージシャンもコウハイに伝播するらしい。
クリスマスイルミネーション華やかな渋谷の町でのイルカコンサート。年々、ホール内は空席が目立つようになった。私の両隣の空いた席が憂いを一層誘うものの、「我が心の友へ」、「17ページのエッセイ」、「サラダの国から来た娘」の歌が励ましだった。
今朝の新聞で、イルカの夫である神部和夫氏の訃報を知る。神部氏は、長い間パーキンソン病と闘ってきたとのこと。
この悲しみを乗り越えて、イルカの涙が励ましの歌に生まれ変わるまで、待つことにしよう。そして、今晩は、久しぶりにイルカの歌を聴いて、休むことにする。