福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

Mさんからのメッセージ

2007-04-27 00:03:22 | 教育

低温科学研究所に所属する教員は、大学院を担当できても、学部を担当することが出来ない状況にあります。もちろん、一般教養課程の全学共通講義「寒冷圏の科学」の一部を担当していますが、専門課程の講義や実習を受け持てないのは、極めて残念なことです。

前の大学では、学科の教務委員や担任、理学部?大学院理学研究科の教務委員(教務委員長までつとめました)、教育実習委員、全学一般教育委員そして全学教務委員と、教務畑を歩んで参りました。中でも、教育実習委員は、人一倍力を入れました。毎年、生物学科で十数名ほどの実習生を中学校や高校へ送るのですが、彼らの研究授業を参観して、現場の先生方とお話しすることが楽しみでした。結構いろんなところを回りました。関東圏は旅費が支給されるのですが、それ以外は私費扱いです。最も遠いところは、岐阜県の岐阜高校でしょうか。

大学1年生向けの教養課程の講義も積極的に担当していましたね。もちろん大教室での講義です。150人位の学生数であれば、1回目の講義で名前を覚え、2回目からは名簿を見ずに学生を名指しであてることができました。

研究室以外の学生さんたちと接するのも大好きです。生物学科の学生はもちろん、他の理系や文系の学生達と接することが根っから好きなんだと思います。理由はわからないのですが、好きなんです。

実は、このところある種の寂しさや物足りなさを感じていました。なんなんだろうと思っていた矢先、立て続けに、教え子たち、他の研究室の卒業生たち、そして前の職場の事務系の人たちからお便りをいただいたのです。苦労を重ねて来たけれどやっと就職が決まったとか、お子さんが生まれたとか。そのうちの何人かは、私のブログをたまたま発見し、ありがたいことに隠れファンになっていただいているとのこと。何かコメントしたいが、実名ブログのため、コメントしにくいとのことです。

お便りのうち、昨日のMさんからのメールは、私への励ましメッセージでもありました。詳しいことは書けませんが、Mさんは長い間米国の大学でポストドク(博士研究員のこと)をしていたのですが、帰国して実家の農業を継ぐとのこと。その人生の岐路にたち、どうしてそのような選択をしたのか、延々と綴ってくれたのです。途中から、涙がぽろぽろと溢れて来たのですが、Mさんらしい前向きな姿勢に、なんだかこちらが励まされました。

こういうとき思うのです、大学の教員になって良かったと。Mさんからのメッセージで、私自身も忘れかけた何かを思い出しました。

北海道大学でも、フィールドに根ざした環境科学部を新設してみてはどうでしょうか? 第一線の研究を行いながら、学部での講義を楽しく行う。これです! これから、残された大学教員人生をかけてみようかと思うのですが。

そして、その一歩として、今度の大学祭での講演会をお引き受けすることといたしました。エネルギッシュな学部1、2年生の依頼は断れませんから。

雪氷系の中堅研究者の方からは、「浅はかなブログだねえ」と言われ続けているのですが、こうして、いろいろな方からメッセージをいただき感謝しております。しばらく、ブログも続けていこうかと思います。

最後に、Mさん、ありがとう。帰国したら、札幌にぜひとも遊びに来て下さい。

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童謡「かなりあ」
         詩・西条八十

 歌を忘れたカナリアは後ろの山に棄てましょか
 いえいえ それはかわいそう

 歌を忘れたカナリアは背戸の小薮に埋けましょか
 いえいえ それはなりませぬ

 歌を忘れたカナリアは柳の鞭でぶちましょか
 いえいえ それはかわいそう

 歌を忘れたカナリアは象牙の舟に銀のかい
 月夜の海に浮かべれば 忘れた歌を思い出す   

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