[用例研究 139] 〈what if ~〉
what if に續けて直説法または假定法の動詞の節を置くと、
①「~したらどうなるだらうか」「~ならどうだらう」
②「~してもかまふものか」「たとへ~だとしてもそれが何だらう(ちつともかまはない)」
などの意味になります。②は if ではなく though が置かれることがあり、反語的・文語的表現です。
□參考例文: ①の意味で、直説法動詞の例です。
139.1 What if it begins to rain right now?
たつた今雨が降り出したらどうなるだらう。
139.2 What if you move the desk a little?
机を少し動かしたらどうなるだらうか(/少し動かしてみたら)。
□參考例文: ①の意味で假定法動詞を用ゐた例です。現實と異なる、現實味の薄い條件が提示されてゐます。下の漫畫の例も假定法の動詞です。
139.3 What if he were in my place?
彼が私の立場だつたらどうだらうか。
= Suppose (/Supposing) he were in my place?
139.4 What if it should be stolen?
萬が一にもそれが盜まれたとしたらどうなるだらう。
□參考例文: ②の意味で what though/if の例です。
139.5 What though (/if) we fail?
失敗したつてそれが何だ。
139.6 What though (/if) we are poor?
たとへ私たちが貧しいとしても、それが何だといふのか(かまひはしない)
= What does it matter though we are poor?
[用例研究 139]〈what if ~〉
(BLONDIE By Dean Young & Stan Drake)
1 It’s so frustrating! I’m just trying to get the paperwork done to remodel my shop.
2 But it seems all you people want to do is tie me up in your bureaucratic red tape.
3 And I’m an American citizen! What if I were a foreigner?!
4 Then we could help you!
[解説]
1
・役所のデスクの上に [INFORMATION AND COMPLAINTS] の表示があります。「案内・苦情受付」といふところでせうか。
・get the paperwork done は第五文型(SVOC)で使役の表現です。「文書業務をやつてもらふ」「書類を處理してもらふ」といつた意味になります。
2
・all you people want to do is ~: 「あなた方がしたがつてゐるすべては~」→「あなたがたがしたがつてゐるのは~だけ」。この文體は關係代名詞の項に解説があります。all that you people want to do ~ の關係代名詞 that が省略されたものと考へられます。
□參考例文: 「しなければならないすべては~」→「すべきなのは~だけ」→「~しさへすればいい」
139.7 All you have to do is (to) wait here.
ここで待つてゐさへすればいいんだよ。
なほ、この文體については2011年9月26日付の記事で用例を扱つてゐます。
・tie up: 「(人、交通など)を動けなくする」。tie は原形不定詞です。
3
・were は假定法過去の動詞です。現實とは異なる條件を設定してゐます。
・red tape: 公文書を結ぶ赤いひもの意味に由來し、お役所的・官僚的な形式主義や形式主義的な手續、流儀、慣例などを意味します。
4
・假定法過去の歸結節です。(if you were a foreigner,) we could help you!
[意味把握チェック]
1 「まつたく苛立たせるわね!私はただ、店舖改裝のため書類を處理してもらはうとしてるだけなんですよ」
2 「でも、あなた方(役所の人たちが)やりたがつてゐるのは、お役所の流儀で私を動けなくすることだけに思へて」
3 「それに私はアメリカ市民(/國民)なんですよ!(※「適切に對應してもらへるはず」といふ思ひの表出でせうか)もし私が外國人ならどうなの(/どうなるんでせうね)?!」
4 「それならあなたを支援できるでせうな!」
[笑ひのポイント]
・アメリカに來て日が淺く樣子がよくわからない外國人に對する役所の配慮に對して、アメリカ國民への配慮が不十分である、といつたアメリカ國民の不滿を諷刺的に表現してゐる作品だと觀ました。4コマめの意外な應答で笑はせ、次いで共感、同意、納得の感をもたらしてゐるやうに見えます。なほ、この作品は1995年に發表されたものです。