英文讀解自修室

  - in the historical Japanese kana/kanji orthography

聖心女子大學 2008 (3)

2011-04-08 | 出題英文讀解

 

第2パラグラフ

1 The fear of losing Japanese identity is at the root of most critics of early English education, and Japanese culture can presumably be considered more closely tied to language than others.

2 Yet, many studies have found that a stronger sense of Japanese identity develops through contact with other languages and cultures.

3 Awareness of one’s cultural identity comes as much from comparison as from knowing oneself.

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

1 be considered ( to be ) tied と補ふと、「(言語に一層密接に)結びつけられてゐると考へられてゐる」といふ意味が見えてきます。tied は過去分詞です。

 

2 sense は「内的に意識してゐること」を意味しますから、ここでは「日本の獨自性についての一層強い自覺」の意味でせう。

 

3 awareness は前出の sense に近い意味で使はれてゐます。一種の言ひ換へではないでせうか。

 

3 as much ~とあると、あとにまた as が續くかもしれない、「何かと同じくらゐ……」とか「何かと同樣に……」かなと豫感しながら、讀み進めるとわかりやすいかと思ひます。この文では、まづ、「文化の獨自性の自覺は、比較から(同じくらゐ多く)生れる」と讀み……何と同じくらゐ多くかな、と思ひつつ讀み進めると、その説明が續きます。つまり from knowing oneself と同じくらゐ多く、といふことです。

Awareness comes from knowing oneself は、いはば「あたりまへ、當然」のことなんですね。筆者が力説したいのは、あたりまへでないはう、つまり comparison のもつ效果や重要性なんです。そのため、「あたりまへ」つまり明らかなものを持ち出しておいて、それと同樣に……と讀者を説得しようとしてゐるのでせう。

   文化や言語の比較により、自國の文化や母語の特質が分かることがあります。日本語に於ける一人稱の多樣性、主語の省略といつた具體例を想起するとわかりやすいかもしれません。英文和譯や和文英譯をするときに、かうした例をしばしば經驗してゐることでせう。學問の手法としての「比較」も、自他の特質・特徴を明らかにすることを目論むものかと思はれます。

 

[例文]  ※力説の對象が主語に位置する例になります。

Children are quite as important in the life of a nation as its people.

子どもたちは一國の生命にとつてその國民と同じくらゐ大切である。

 

【意味把握の確認】

1 日本人らしさが失はれるといふおそれが、早期の英語教育を論ずる大多數の心底にあり、さうして日本文化は、他の文化に比べて言語との結びつきが一層強い、と考へられさうなのである。

 

2 それでも、多くの研究を通じて、日本人らしさの自覺は他の言語や文化との接觸を通じて一層深まる、といふことが明らかになつてきてゐる。

 

3 自らの文化的獨自性の自覚は、自分自身を知ること(から)と同樣に、(他の文化と自らの文化を)比較することからも生れるのである。