宮崎さんが、昨日のトランプ政権のナヴァロ教授について詳しく書評で書いてくれています。その中に、何とも、日本の企業のバカさ加減にピッタリの「日本企業も中国の軍拡に手を貸してきた」と言う言葉を書いてくれています。
日本の財界人にはこの現実が分かっていないのでしょうか。もし、本当に分かってないとすれば、その劣化は救い様がないですね。
撤退は中国の邪魔で、かなり難しいようですが、この軍拡に手を貸しているという自覚があれば、何があっても撤退するしかないということが分るはずです。
そして、その徹底に補助金くらい出せよと政府に言いたい。何時まで、敵に手を貸せば気が済むのでしょう。
トランプとドウテルテさんがどう動くかも興味があります。まだまだ、どうなるかは分からないものの、宮崎さんの情報では、中国がいよいよ追い詰められそうで期待したいものがあります。
平成29年(2017)1月5日(木曜日) 通算第5153号
宮崎正弘の国際ニュース・早読み <トランプはスービック湾とクラーク空軍基地の再開に踏み切るか?
トランプはスービック湾とクラーク空軍基地の再開に踏み切るか?
高まる南シナ海の軍事緊張、フィリピンも反米の前に安全保障優先の筈だが。。。
南シナ海を航行中の中国海軍空母「遼寧」と、サンディエゴを出航する米海軍の空母「カール・ビンソン」が1月20日頃、西太平洋で対峙する観測があがっている(産経、1月5日)。
ここで国際的な安全保障上の要衝としてフィリピンの重要性が地政学的見地から見直され始めた。
ドウテルテ比大統領はオバマ政権から「人権無視」と批判され、突如「反米」に切れた。
「麻薬犯罪を摘発し、売人を捕まえることに問題があるのか、逆らえば射殺するのも当然である」とドウテルテ比大統領は言いはなった。
「嘗て米国はフィリピン人を四十万人も虐殺しているではないか」。(高飛車な物言いをつづけるのなら」「米軍は二年以内にフィリピンから出て行け」と怒号したところ、国民の圧倒的支持を得た。
しかもドウテルテ比大統領は、米国と対決する中国をさきに訪問し、通商を優先、中国からのフィリピン投資を歓迎し、スカボロー礁の領海問題は棚上げするとした。
国際仲裁裁判所の「中国の南シナ海が中国に帰属するという主張には何の根拠もない」とフィリピンの勝訴があったばかり、中国は「判決など紙くず」と叫んだ。このせっかくのチャンスをドウテルテは政治的に活かさず、通商拡大の道を選んだ。米国とは対立したままだった。
嘗て米軍の基地があったスービック湾とクラーク基地は、どうなったのか?。
ピナツボ火山の噴火で火山灰が数メートルも積もったクラーク空軍基地は使えなくなり、米空軍は自然災害によって主力基地を失った。
いまクラーク基地は民間空港として再開され、キャセイ航空、アシアナ航空などが乗り入れている。筆者も二年前にクラーク基地周辺を見学したが、再開していたことには驚かされたし、昼飯をとった周辺の町は、焼き肉レストランが多い、コリアンタウンに変貌していた。
スービック湾はコレヒドールから北北西へ一時間ほど。巨大な港湾都市に、米国艦隊が駐留していた頃、四万人の米兵と家族が常駐し、経済繁栄を極めた。262平方マイルの海軍基地は、海外では世界最大規模だった。昨師走に無人潜水艇が中国に捕獲された事件現場は、ここから僅か50海里の海域である。
米第七艦隊はスービック湾の代替として日本、韓国、グアムに加え、シンガポール、そして近年ではベトナムにも寄港している。
スービック湾は自由貿易加工区となって、日本、中国、台湾企業が進出しているが、米軍が去ったあとの寂しさは、そのままの状態である。
両方の地区とその周辺都市に、およそ1万5000人の、退役軍人が主体のアメリカ人が暮らしている。
▼ドウテルテが反米路線をつづけると比軍の軍事クーデタもなきにしもあらず、だ
1992年、米軍はフィリピンを去った。
20年の歳月がまたたくまに流れて、オバマ政権の「アジアピボット」以降、ちらほらと米海軍艦艇がスービック湾に寄港するようになった。「以前の米軍の施設は残されたままで、明日にでも使える状態である」(ワシントンタイムズ、1月4日)という。
2015年にアキノ前政権は「米比安全保障条約」を改定し、米軍寄港ならびに、訓練のため米兵の駐留を認めた。
ところがドウテルテ比大統領は、この条約を反古にすると放言しており、「親米路線のフィリピン軍は猛反発している。軍事クーデタの可能性も云々されている」(同ワシントンタイムズ)。
トランプ次期政権は、アジア軍事戦略をオバマの「リバランス」路線から、その強化にシフトさせるだろうと予測される。そのとき、クラーク基地とスービック湾を、いかにするのか、具体的プランはまだ一切明らかではない。
しかしフィリピンの地元は表向きの慎重論とは裏腹に期待に溢れている。
「なぜって、トランプとドウテルテは似ている。両者ともに『ダーティ・ハリー型』の人間で、悪は許さないというライフスタイルゆえに二人はきっと馬が合うはず」と退役軍人ら発言している。
いすれにしても、フィリピンの軍事基地をいかに扱うかが、これからの米国のアジア太平洋における関与の度合い、その真剣度が見えてくることになるだろう。
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 しょひょう BOOKREVIEW
トランプのブレーンが解説する野放図な中国の野心
トランプのぶれない中国批判の源泉は、この本にあった
ピーター・ナヴァロ著 赤根洋子訳『米中もし戦わば』(文藝春秋)
中国脅威論の決定版のひとつが本書である。
オバマ大統領は誰にそそのかされたのか、軍事的知識に乏しく聯略的判断が不得手のため、敵と味方を取り違えている。ロシアを敵視して、ハッカー攻撃の犯人だと証拠を挙げずに断定し在米のロシア人外交官35名を追放した。
プーチンはこの措置に報復せず「次期政権の出方を待つ」と余裕を見せた。
フランスの戦略思想家レイモン・アロンに有名な箴言がある。「正義が統治する社会を定義するより、状況を不適切と非難することは易しい」
そのトランプは『ツィッター大統領』と呼ばれ、記者会見を滅多に開かず、逐一のメッセージを自らが書き込むツィッターで、政策のヒントを繰り出してきた。既存のメディアを無視する遣り方に米国のジャーナリズムは慌てた。
政治に必要な即効性の武器がネット社会では変革していた。トランプは時代を先取りしていた。
そしてトランプは「オバマやヒラリーに比べたらプーチンのほうが賢い。馬が合いそうだ」と強烈なメッセージを発信した。
トランプはしかし、中国に対しては強硬である。
その発言の数々をフォローすると、どうやらトランプの情報と分析の源泉が、この本にあると判断されるのである。
ナヴァロはまず、中国の軍事戦略を緻密に検証してこう言う。
「中国はソ連とはまったく異なるタイプの軍事的競合国である」
「このままではアメリカは中国に(少なくともアジア地域で)『降参』と言わざるを得なくなるかも知れない」(50p)という危機感を抱いている。
最大の脅威とは核戦力や、ミサイルの数や、艦船、空母の員数や能力ではなくハッカー攻撃力である。
「平和にとっては不都合なことに、中国ほどアグレッシブにサイバー戦争能力の増強を図ってきた国はない。また、平和で貿易の盛んな時代にあって、中国ほど積極的にサイバー戦争能力(の少なくとも一部)を展開してきた国もない」(121p)
ロシアのハッカー能力より、中国のほうサイバー攻撃で勝っているのに、オバマはなぜロシアだけを問題にしたのかが問題だと、この行間が示唆している。
中国にはアルバイトを含めて200万のサイバー部隊がある。
「もっとも悪名高きサイバー部隊はおそらく、上海・浦東地区にある十二階建てのビルを拠点とするAPT1部隊であろう。APTとはアドバンスド・パーシスタント・スレット(高度で執拗な脅威)の略語で、コンピュータネットワークを長期間攻撃することを意味する。(中略)。中国人ハッカー達がこうした産業戦線で盗もうとしているのは、大小の外国企業の設計図や研究開発の成果、特許製法といったおきまりのものだけではない。彼等は電子メールから契約リスト、検査結果、価格設定情報、組合規約にいたるまでありとあらゆるものを傍受している」(123p)
そのうえ、中国のサイバー部隊には第三の戦線があることをナヴァロ教授は指摘している。
「配電網、浄水場、航空管制、地下鉄システム、電気通信など、敵国の重要なインフラへの攻撃である。これには、民衆を混乱させるとともに経済を壊滅させるというふたつの目的がある」(124p)。
ともかくアメリカは「中国製品を買うたびに中国の軍事力増強に手を貸している」というあたり、まるでトランプのツィッターから放たれたメッセージと読める。
まさに中国と商いを拡大するごとに日本企業も中国の軍拡に手を貸してきたのだ。永田町や霞ヶ関の人たちよりも、この本は大手町あたりに本社を置く日本企業幹部に読んでほしいと思った。
日本の企業幹部に読ませても分るでしょうか。分る人なら、既に撤退しているのじゃないでしょうか。この期に及んでまだぐずぐずしているような経営幹部にはきっと理解できないのじゃないでしょうか。
実際に事が起こって、莫大な損害を被って初めて気がつくのでしょう。と言うか、それでも目が覚めないのかも。
欲に目が眩んでいるのでしょう!