「センセイの鞄」を10年振りくらいに読んでいるが、あるいは5年前にも読んでいるかもしれない。
その割に内容を覚えていないところが多い、多分初期の頃2,3回読んだので、細部まで覚えていたのだが。
何しろ一番面白いところは、ツキコさんが憧れのセンセイと旅館に泊まるが、何しろ先生とは年が離れているし恩師でもあるから、一部屋で一つのお布団ではなく、別の部屋に泊まっている。
夜、思いのたけが嵩じて先生の部屋を覗いたら、なんと先生は蛸の絵を描いていたというくだり、初めて読んだ時は爆笑し、二度目三度目はそこの場面を目指して読み進めた。
他の多くの場面でも川上弘美のひょうきんな部分が面白いのだが、この場面がこの小説の白眉ってやつでね、当時は未だ川上弘美もスラッと背が高く長い髪で魅力的で、このひょうきんさがさらなる魅力だった。
去年、野間文学賞を受賞した小説は「恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ」といった相変わらずひょうきんな題だが、最近のお姿を拝見したら黒縁の眼鏡をかけて往年の魅力はどこを探しても、この先ナイなんて書くと問題なのでここで止めておく。