キュヴェ タカ/cuvee taka 「酔哲湘南日記」

新鮮な山海の恵みを肴に酒を吞み、読書、映画・音楽鑑賞、散歩と湘南スローライフを愉しんでいる。 

狐の剃刀

2007年04月28日 | Weblog
「狐の剃刀」は赤江瀑さんの新刊書の題名です。ヒガンバナ科の有毒植物の名前でもあります。何度か赤江さんについてはお話させて頂いておりますが、私も最近まで読んだ事がありませんでした。読売新聞の日曜日の文庫本紹介欄で取り上げられたのを観たのがきっかけでした。昨年12月発売の学研M文庫「赤江瀑傑作選」を皮切りに、今年1月発売の光文社文庫「花夜叉殺し 幻想篇」2月発売「禽獣の門 情念篇」3月発売の「灯籠爛死行 恐怖篇」と立て続けに旧作が編まれ、4月に徳間書店より2003年から2006年にかけて「問題小説」誌上に発表された短編が編まれた「狐の剃刀」が出版されました。幻想耽美の連続攻撃にあれよあれよといっているまもなく虜となっておりました。

「狐の剃刀」は全編京都が舞台です。「京都の平熱」以来、ここのところ京都にやられっぱなしです。路地を曲がればそこには異界が口をあけている。千年の怨念と悦楽がしみこんだ街。同様の街を世界中探しても他にありえない。さて、ワイン業者として気になるのは飲酒場面ですが、残念ながらこの「狐の剃刀」にワインが出てくる場面ははありません。バカラのグラスでウイスキーをやっている場面はあるのですが、赤江さんワインお嫌いなんでしょうかね。あるいは幻想耽美小説には似合わないのでしょうか。

先斗町辺りの色街、古風で洒落たワインバーでなり初める、バレーの踊り子と歌舞伎役者の異母兄弟。運命に操られる二人の妖しい色恋沙汰の顛末なんかぜひ読んでみたいですねえ。その舞台に登場するワインは何を想定すれば良いのか、なかなか難しいですよ選ぶのが。この街に合うワインは洗練された歴史を持った産地のものでなければだめでしょう。そして色は情念の赤。とすれば一つ思い浮かぶワインは、シャトー・ド・ジュブレのジュブレ・シャンベルタン。廃墟のようなシャトーで黒ミサが執り行われるのかと見間違うような試飲の部屋に、蝋燭を捧げ出現した年老いた黒装束の女主人。ワインの味わいより舞台装置に感銘したのが既に8年ほど前。あれなんか京都を舞台の幻想耽美小説に使うにはうってつけですね。

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