キュヴェ タカ/cuvee taka 「酔哲湘南日記」

新鮮な山海の恵みを肴に酒を吞み、読書、映画・音楽鑑賞、散歩と湘南スローライフを愉しんでいる。 

雨の横浜で

2014年12月13日 | Weblog
雨の横浜を馬車道まで歩き、井桁寿司に入った。
大きな桶を三つ出し、忙しく鮨を握っていた。
「忙しそうだね」
「師走ですねえ、出前が多くて」
「今日は、チラシで」
「ところで、ラーメンは何処で食べます」
「俺は済んだスープが好きなので、毎日スープを作っている茅ヶ崎の龍源で食べてるけど」
「いや、この辺で美味いところないですかね。実は昨日夜遅くなったので、息子と二人ラーメン屋を探して入ったんですが、喰えたもんじゃなかった」
「ここら辺りのラーメンは豚骨スープで背脂が浮いているからね、とても喰えたもんじゃありませんよ」
「あたしもね、豚骨スープ駄目なんですよ」
「親方肉が好きなのにね。横浜らしく中華街の青菜そばか葱そばが良いんじゃない、さもなきゃ蕎麦はどうなの、近頃じゃ飲んだ後には蕎麦だけどね、俺は」
「蕎麦といや、平和ホテルの前に、昔「田毎」てのがありましたね、ここが美味くて、あたしゃ蕎麦が好きじゃなく、女房に蕎麦食わしといて、天丼、海老天が二本のってるやつ、あれが美味かったなあ、今じゃ美味い天丼出す蕎麦屋ないでしょう。野菜の天婦羅がのっててね、何なんですかね」
「そうね、南瓜とか薩摩芋の天婦羅なんかのってるとがっかりしちゃう、女鯒、キス、穴子なんかだと嬉しいね」
すしを前にして、ラーメン、蕎麦、天丼の話に夢中になっているわけです。
周りの客は変な人だと思っていたでしょうね。

馬車道を横切って、関内ホールの脇から銀杏並木の大通りへ出て、関内駅方面へ向かいセルテ4階の芳林堂を覗く。
最初に興味を惹いたのは、団伊玖磨「パイプのけむり味」小学館、これを読売新聞子広告で見たときに、前にも同じのが出ていて買ったなと思ったが、奥付を観ると初版で説明を見ても連載されたものから食に関わるものを選んで編んだとしか書いてなく、前に小学館で肌していないのかもしれない。この他に、「旅」「話」というのがある。
620円なので持っていても良いから買おうかとも思ったが、持っていれば二冊持っていで辞めておいた。
帰ってからネットで調べてみると数年前に「食」というのが出ていた。
もっているのはこれだ、「味」を買わなきゃいけない。

赤瀬川源平「名画読本日本画編」光文社 2005年初版 2014年2版、和の色を愛でる会「暮らしの中にある日本の伝統色」ビジュアルだいわ文庫、佐伯啓思「学問の力」ちくま文庫の三冊を買う。

赤瀬川源平さんの本は「老人力」がベストセラーになったが、他の本はあまり売れていないようであり、お亡くなりになって追悼出版の形で色々と出ている。
これも2005年に初版が出て今年まで増刷されていないわけで、版元はここぞとばかりに刷ったのであろう。
でも僕みたいな人が手に取って買うわけで、まんまと版元にしてやられているわけだ。

この本を見た後で「暮らしの中にある日本の伝統色」を手に取ったら、和の色見本帳に和の色を愛でる会の皆さんが、愛情こもった解説を書かれているという体裁で、同じ流れの中に吸い込まれ、躊躇することなく無く購入を決めた。
人間年をとると和に回帰するといわれているが、洋食より和食、洋酒より酒、洋服より和服、洋画より日本画、フランス式庭園より日本庭園が好ましい。

佐伯啓思さんの本はよく読んできたが、さて、この方がどんな思想を持って何を言わんとしているかについては、全く分からない。
色々な本を片っ端から読み飛ばしていると、著者の影響を受けにくく、その点は優れた読書法であると感じている。
しかし、還暦を迎えるにあたり、人に諭すべき見識を持っていないことは大いに恥ずべきことのような気がしてもいる。
 

コメント
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