全仏オープン ロジャー・フェデラー総括-2
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2回戦 対ソムデブ・デブバルマン(Somdev Devvarman、インド)
6-2、6-1、6-1
試合開始予定時間は現地時間29日午後3時半(日本時間29日夜10時半)でした。ところが、前の試合が押して2時間以上も遅れ、現地時間夕方5時40分ごろ(日本時間30日午前12時40分ごろ)にやっと始まりました。
勘弁してくれよ、と思いましたが、こういうふうに時間が押している場合や、翌日の試合に備えて当日の試合を早く終えたい場合、フェデラーは異常な強さを発揮して、短時間でさっさと勝ってしまうことがあります。
そんなフェデラーのモチベーション(?)に期待して、この試合ばかりは、フェデラーに勝ってほしいという気持ち以上に、とにかく早く終わって下さいという気持ちのほうが正直強かったです。
対戦相手のDevvarmanの発音が分かりません。主審は「デブバルマン」と呼んでいた気がします。バレエ『ライモンダ』に出てくるサラセン人「アブデラフマン」に似た名前だな~、と思ったので記憶に残っています。ニュース記事を見たら、他に「デバーマン」、「デウバーマン」という表記もありました。
デブバルマンはインド国籍だそうで、インド出身のプロテニス選手って珍しいんじゃないでしょうか。コートに入ってきたデブバルマンを見たら、ほっそりした体つきの少年だったので、まあ、この華奢な坊やはいくつかしら、きっと期待の新星なのね、と思いました。
しかし、画面に表示されたデブバルマンの経歴を見たら、"Age 28"とあったので仰天。フェデラーと3歳しか違いません。28歳でこの童顔?この極細の体?アジア人ってほんとに若く見えるんだな~、と思うのと反比例して、フェデラーがいよいよおっさんに見えてきます。
フェデラーは、第1セットは主に強打中心で、第2セットはネット・プレー中心で、第3セットは強打とネット・プレーをバランス良く織り交ぜて攻撃していました。フェデラーにしては珍しく、攻撃心をかなり露わにしていて、まるでデブバルマンを威嚇しているように見えました。フェデラーがネットに走り出るたびに、観ているこちらまで「うわっ!来た!」と緊張しました。
デブバルマンについては、この選手が予選を通過したのも不思議なら、1回戦で勝ったのも不思議です。デブバルマンの自己最高世界ランキングは62位(2011年7月末)です。2012年の初めからランキングが急激に落ちて、今年の初めからまたランキングが急激に上がってきている(現在は188位)ので、怪我や故障などの理由で1年間休んでいたのかもしれません。
デブバルマンの武器は何なのかを注意して観ていたら、どうもサーブと強打のようです。でも、武器といえるほどのレベルではないように感じました。フェデラーはデブバルマンのサーブを返していたし、強打のラリーでもデブバルマンに打ち勝っていました。それに、デブバルマンはネットにまったく出ません。フェデラーに引きずられて出てきた場合を除いて、徹底してネット・プレーをやりませんでした。
その他にも、デブバルマンは、ボールに追いつけない、あっさりとあきらめる、簡単に逆を突かれる、フェデラーにネットにおびき寄せられると決まってミスをする、といった具合で、実況中継も第2セットあたりから「これはもう(試合ではなく)練習ですね!」と言ってました。
第2セットか第3セットだったと思いますが、フェデラーのサービス・ゲームで、デブバルマンが位置につくのが遅れたときがありました。フェデラーはデブバルマンを待っている間、無表情でラケットの縁にボールを乗せました。そのままラケットを動かすと、ボールがまるで磁石でくっついているかのように、ゆっくりとラケットの縁に沿って動き出し、ラケットの縁の半分を2往復くらいして止まりました。観客が拍手しました。
試合は1時間20分で終わりました。フェデラーが強かったというより、デブバルマンがあまりにも弱すぎたという印象です。グランド・スラムにふさわしい試合ではなかったように思いました。
3回戦 対ジュリアン・ベネトー(フランス)
6-3、6-4、7-5
フェデラーはこのベネトーという選手が苦手なんだそうです。去年のウィンブルドン選手権ではフルセットでようやく勝ち、今年の初春に開催された大会ではストレートで負けています。
それで少し心配でした。案の定、第1セットはフェデラーのサービス・ゲームで始まりましたが、フェデラーは明らかに緊張しており、あっさりとブレークされてしまいました。ところが、次のサービス・ゲームから、フェデラーのプレーが良くなり始めました。
ベネトーが2-1とリードしての第4ゲーム、フェデラーはブレーク・ポイントを握るとすかさず取り、2-2のタイ・スコアに戻しました。このへんから、ベネトーは自分のサービス・ゲームをキープするのに苦心するようになりました。一方、フェデラーは簡単にキープしていきます。
このベネトーという選手は長身らしく、速いサーブ、パワフルな両サイドへのリターン、フェデラーに余裕を与えない速いテンポでの試合運び、そしてフェデラーのバック・ハンドを徹底して攻撃するといった戦術で臨んだようでした。
反射神経も良く、ネットでのプレーにもなかなか秀でていて、優れた選手だと思います。しかし不思議なことに、ベネトーはどうでもいいゲームではすごく強いのに、肝心なゲームではすごく弱いのです。
第1セット第8ゲーム、フェデラーが一応リードした4-3で、ベネトーのサービス・ゲームになりました。フェデラーがプレーク・ポイントを握りました。プロ選手は普通、こういう絶対に落としてはならない重要なゲームは死守するものなんですが、ベネトーはこのゲームを確かダブル・フォールトだったかミスだったか(フェデラーのコード・ボールだったかも)で落としてしまいました(後記:違いました。0-40でフェデラーのバック・ハンドのリターンが決まったからでした。ごめん)。フェデラーは次のサービス・ゲームを鉄壁で守り、6-3で第1セットを取りました。
第2セットも同じでした。第2セットはキープ合戦になって4-4となりました。第9ゲーム、ベネトーのサービス・ゲームです。これも絶対に落としてはいけません。ところが、なんと0-40でフェデラーがブレークしてしまいました。フェデラーは次のサービス・ゲームを鉄壁で守り、6-4で第2セットも取りました。
第3セットもやっぱり同じでした。第3セットもやっぱりキープ合戦になって5-5となりました。第11ゲーム、ベネトーのサービス・ゲームです。これもやっぱり絶対に落としてはいけません。ところが、やっぱりなんと0-40でフェデラーがブレークしてしまいました。フェデラーは次のサービス・ゲームをやっぱり鉄壁で守り、7-5で第3セットもやっぱり取ってそのまま勝ちました。
(後記:てことは、3セットとも、フェデラーはベネトーの最後のサービス・ゲームをすべて0-40でブレークしたんだ。こんなことがあるのね~。)
解説者は、これはベネトーの問題ではなく、フェデラーのせいだと言っていました。フェデラーは重要な局面になるといきなりスイッチが入って、ものすごいボールを打つんだそうです。
だから、ベネトーが絶対に落としてはならないゲームに限って、フェデラーが取ってしまうらしいです。フェデラーは、どうでもいいゲームではすごく強いわけではないが、肝心なゲームでは異常に強くなる、ということのようです。フェデラーは今日の試合、4度ブレーク・ポイントを握って、すべて1回目でブレークしたと思います。
試合は1時間半で終わりました。観ているときは白熱した、緊迫した試合のように感じたのですが。
でもほんとは、第2セットの序盤あたりで、フェデラーが自分から崩れない限り、フェデラーが勝つだろうと思いました。全体的にベネトーが劣勢になっていたし、あとこれ。第2セット、ベネトーのサービス・ゲームで、ベネトーのリターンがネットに引っかかり、フェデラー側のコートにぽとんと落ちました。これでベネトーはこのゲームをなんとかキープできました。
面白かったのは両者の反応の違いです。コード・ボールでポイントを運良く取れた場合、相手選手に向かって手を上げ、「ごめん」という意思表示をするのが通常のマナーらしいのです。でも、ベネトーは疲れ切った表情でうつむいたまま、手を上げることがありませんでした。一方、フェデラーはボールが落ちた瞬間、両足を揃えて、ぴょんっ!とユーモラスに飛び上がりました。それを見て、ああ、フェデラーは心に余裕があるな、こりゃ大丈夫だ、と分かりました。
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