▼TPP脱退を主張したトランプ氏が、次期米国大統領に当選した。にも関わらず、安全保障の同盟国である日本が、TPP承認案と関連法案を、その日に衆議院を通過させた。その理由が解せないと、マスコミはこぞってアベ政権を批判する。交渉内容の4割もの黒塗りの報告書が提出され、それを承認する国会議員は「オレオレ詐欺」だと、薄々感じていながらも騙される、高齢者とよく似ているのではないか。民主主義国家として71歳になってしまった我が国だが、国会議員が痴呆症になってしまっては、我が国の将来に希望はない。
▼TPPは経済を混乱させるとし、脱退を証明しているトランプ氏のほうが、なんだか聡明な気がしてくる。早速、アベ総理がトランプ氏と会談するらしいが「こうやくは、剥がしてもいい」という言葉が日本にはあるので「大統領の選挙公約は、撤回してください」と頼みに行くのだろうか。対するトランプ氏「それなら米軍のおもいやり予算を、全部出して欲しい」と、言ってくるのだろうか。今後の日米同盟「トランプVSシンゾウ」。どちらのハッタリが強いのか、目が話せないところだ。
▼アベ総理は、戦後従属させられていた日米関係を、新大統領誕生を機に、TPPの主導で大逆転する作戦にでたのだろうか。TPP承認についてこんなことを思い出した。1997年9月、日米両国が合意した「新ガイドライン」=「日米防衛協力のための指針」だ。
▼「周辺事態」は地域の概念ではなく、事案の内容と性格によるというのが政府の説明だ。わけがわからない。このまま進んでいくと日米安保の目的と範囲を超えて、在日米軍の行動そのものが、日本が支援する周辺事態になるのではないか」と危惧したのは、官房長官や副総理を努め「カミソリの後藤田」と呼ばれ、タカ派だが頭脳明晰の後藤田正晴氏だ。
▼その、後藤田氏でも周辺事態の定義には疑問を抱いていた。TPPも、その内容に疑問を抱く自民党議員を少なくないらしい。TPPと周辺事態法、この二つは、我が国の安全保障と経済に多大な禍根を残すものかもしれない。第一、国民がよく理解できないものを通過させるということは、国家にとっては都合のよいことなのだろう。だが、国民にとっては不都合なことが多いからにほかならない。
▼英語で作られた文章も、外務省で訳すと、必ずしも真意ではない訳し方をするというのは、外務省の元官僚の言葉だ。首脳同士の会談で、通訳の理解力不足で、国益を損ねているというのも、あるのかもしれない。トランプ氏の勝利宣言が同時通訳されていたが、2局の通訳には若干ニュアンスが違うものを感じたからだ。私は英語を理解できないが、日本語の通訳者の個性の違いが、トランプ氏の理解に微妙な違いを、私に感じさせたからだ。
▼1960年(昭和35年)の日米安全保障第2条。『契約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基盤をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによって、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国はその国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済協力を促進する」とある。
▼安全保障と経済連携は、切り離せない関係のようだ。アベ総理は安全保障面では米国に依存しながら、経済政策では主導権を握り、同等な日米関係を構築しようと努力しているのかもしれない。それなら一切包み隠さず、国民にその内容を開示し、国民の理解を深めるようにしてほしいものだ。そうでなければ、TPPとは「T=とんでもないP=ペテンのP=プラン(計画)」と呼ばれそうな気がするが。