▼NHK・TV日曜スペシャル「原発・廃炉への道」を観た。原発は事故が起きたら、広島・長崎以上の被害を被る。だから原発イコール安全という、神話をつくりださなければならなかった。我が国の神話とは、たぶん真実ではないかもしれないが、正当性を長く維持することにより、なくてはならない存在と化し、やがて批判の対象を免れるものになっていくのではないだろうか。そこで神話を受け入れて、精神の拠り所にしたのは国民ということになる。結果、事故後の処理は国民全員でという結論が、導き出されるのではないだろうか。
▼先の戦争が終わった時、我が国には「1億総懺悔」なる言葉が流行した。国民全員にも責任があるという意味なのだろうが、責任は国民全員が負うという考えにすり替えられてしまったのではないだろうか。事故処理担当の自民党国会議員や東電社長の考えも、最後には、電力で暮らしや生活の向上を享受してきたのは国民なので、国民全体で負担していただかなければ、世の中が成り立たないという結論には驚く。
▼電力会社の経営方針そのものの「総括原価方式」と同様の「総国民責任方式」を取るようだ。だが、我が国に原発産業を導入したのは、中曾根元総理と、読売新聞元社長の正力松太郎氏だ。現在も意気軒昂な中曾根氏に登場いただいて、原発事故の責任を問うてはいかがだろうか。我が国の、原子力開発予算を初めて確保したのも中曾根氏だ。当時「札束で学者のほっぺたを叩けばいいんだ」と言ったという。最近、大学の研究も軍事力に転換できるものなら、補助金を出すというシステも、そんな発想から来ているのかもしれない。
▼豊洲移転問題も、盛土をやめるという設計変更当時の、8人の都幹部の処分で終わっては意味がない。そこには、当時強力な権力であった自民都連の内田氏や、印鑑を押した石原元知事が加わっていたのは間違いない。役人が議会や首長に相談なく、独自で改ざんするなど考えられないからだ。二人はまだ健在だ。この二人を問いたださないで幕引きをしたら、小池劇場も詐欺劇と化すだろう。あるいは、石原氏や内田氏を操った、もっと大きな集団があるのかもしれない。私たち国民が小池知事に期待するのは、男社会では不可能な、真実の究明である。
▼「真の責任者を出せ」。そう叫ぶ声が、福島第一原発事故や豊洲問題に投げかけられているのではないだろうか。神話の世界は昔々の、山に囲まれた小さな村での話だけでいい。現在に神話をつくることは、利権をむさぼる怪物を登場させる「巨大なムラ」ができるからだ。
▼話は大きく飛ぶが、昨日、函館市町会連合会と函館市長との懇談会が市内であった。函館港に12万トンの大型クルーズ船が入港できる国の予算が付いた。アベ内閣の「21世紀型のインフラ整備」での、予期せぬ補正予算だ。「12万トンといえば米空母が10万トンクラスなので、入港の要請があった場合、市長はどう対処するのか」と尋ねた。「空母が接岸するには、水深13メートルが必要だ。国は10メートルの整備といっているので、沖にしか停泊できない」と答えた。
▼我が国の防衛には、3海峡封鎖というのがある。対馬海峡・津軽海峡・宗谷海峡だ。この海峡を封鎖すれば、当時のソ連も太平洋には出れないということらしい。港湾の深さなど、国防上の秘密だろう。函館港は国の所管だ。米艦隊が何時でも入港可能な整備こそ、安保関連法を整備したアベ政権の考えるところだろう。今回の港湾整備の補正予算は、函館だけでなく、稚内港にも予算が付いている。
▼ちなみに、3海峡封鎖は、我が国を「不沈空母にする」と発言した、中曾根氏である。NHK籾井会長にお願いしたい。「責任者語る」というスペシャル番組を企画していただきたい。出演は、中曾根氏と石原氏とアベ総理だ。戦後日本史の真実が明らかにされると思うが。