▼市場の地下に盛土をする設計が、いつの間にか変更され空洞になっていた。2011年、当時の知事だった石原信太郎氏が、部下である市場長から、コンクリートの箱のようにして空洞にする計画を聞いていたという。それに対し、石原氏は「自分は建築の専門家でもないので、そうするといわれればそうかと思ってしまう」というような回答をしている。だがブログを書いていたらテレビで、当時の市場長が、石原知事から「空間にしてコンクリとの箱にしたら、工事が安くて早く済む」といわれたと証言した。石原氏特有の「知らんぷり作戦」のようだ。今回の都知事選も、自民党公認の増田氏を応援した際、小池候補を「厚化粧の大年増」と罵倒した。歯に衣を着せないことで有名な石原氏、自分のこととなると、人に罪を押し付けるタイプのようだ。
▼豊洲移転問題は、石原都政の時から始まっている。オリンピックが、近い将来東京に決まることを見越して、都側に大手ゼネコンからの豊洲移転のプレゼンがあったのかもしれない。東京オリンピック開催はゼネコンの稼ぎ場である。老朽化した築地市場を、より環境の安全な場所に移転というプロジェクトを、石原都政の目玉政策にと進言するのは、ゼネコンの得意とするところだろう。石原知事なら、それを成し遂げる実力があると、自民党都連議員にも働きかけたのだろう。巨大プロジェクトは、大きなお金が動く、そこにお互いの利権が一致したというのが、私の他愛ない推測だ。
▼とかく上から目線の石原氏。直木賞作家であり言葉の使い方は巧みで、相手をこきおろすのが得意だ。だが、自らも「暴走老人」などと称し「太陽の季節の時代」にワープするような慎太郎スマイルで、いつも煙に巻いてきた。だが、盛土から地下空間に変更するよう指示したのが石原氏だ。それが技術委員会でも説明がなかったので、誰もが埋め戻しをしていたものと理解していたようだ。少しずつではあるが究明される今回の問題に対し「東京都は伏魔殿だ」と発言したのは、もちろん、今回の問題の主人公ともいわれる石原氏だ。
▼老体鞭打って上梓した「天才、田中角栄」の売上も好調だという。最後はどんなタイトルで自分の生涯を締めくくるのか楽しみである。小説「黄昏の季節・石原慎太老」。最後まで我儘し放題の、笑顔がチャーミングな、裕次郎の兄さんで終わってほしいものだ。