▼台風の中で暮らしていたような1ヶ月だった。1月に海が大荒れになり、生育中の天然昆布が流されたという。6月頃から始まった養殖昆布も、海水温が高いのが原因と言われているが、育成が著しく悪かった。自然環境が大きく変わって来ているのではないかと漁師も原因がつかめていないようだ。8月に天然昆布漁を開始したが、1月の時化の影響で、海の中は昆布が疎らにしか生えていない。昆布漁初日は、舟に昆布の山を乗せて港に入るのだが、昆布の山は噴火したように平らになっていた。それに続く台風の来襲だ。3度目の出漁は1ケ月後の9月2日となってしまった。降り続く雨の影響で海が濁り、散々な漁となった。それに魚も台風のせいか、どこに行ったか行方不明状態だ。今年の北海道、水産も農業も壊滅的被害だ。今国会でTPPの決議をするようだが、台風とTPPで、北海道の一次産業は壊滅するのではないかと心配する。
▼台風は、水産や農業被害ばかりではない。道路や鉄道網の甚大な被害もある。JR北海道も、復旧に道の支援を仰いでいる。私が危惧するのは日高線だ。以前から高潮の被害で、廃止か存続かの話し合いが続いていたが、今回で被害がさらに拡大し、JR側は再開するなら、沿線の各自治体に年間2億円、計13億円の支出を求めてきた。それに対し各自治体は「これは事実上の廃止協議」だと反発している。北海道の台風被害には既に国交相が来道し、知事も激甚災害の指定を要望している。被災地の首長の中には、涙を流して国の支援を訴える人もいた。ジリ貧の北海道各自治体の財政事情だが、予算の拡大支援は、与党の選挙応援の基盤づくりに利用されるのではないかと、ちょっぴり不安だ。
▼随分前の話だが、下北半島を走っている鉄道が、地震の被害を受けた。復旧費用が大きく、当時の国鉄は赤字路線だったことで廃止の方向を打ち出した。ある沿線自治体で、再開を要望する代わりに、首長や自体職員、議会や住民の多くが、自民党員に加入したということを、ふと思い出したからだ。現在はそこまでしないだろうが「背に腹はかえられぬ」の例えがある。地域振興を願う首長なら、国との取引に応ずる姿勢を示すのではないかと危惧する。広大な大地北海道、溢れる核のゴミ処分場になりはしないかとの杞憂だ。
▼道は好調な観光に、さらなる観光客の誘致を目指し、道内空港の一括民営化を国に要望した。色よい返事をしたのは菅官房長官だ。来年度の沖縄の振興予算を大幅に削り、国に反旗を示すものには、兵糧攻めをというのが官房長官の腹の中だ。また、アベ総理は北海道の選挙基盤強化を、鈴木ムネオさんに応援を頼んだ。ムネオさんは予算獲得をちらせかせ、自治体の首長を説得するのが得意だ。ムネオさんの長女貴子さんの政治後継人には、アベ総理が付いたようだ。来年にも公民権が復活するムネオさん、北海道は総理から自分があずかっていると解釈し、自民党の様々な課題で、北海道ができるものを処理するために、命をかけた活躍をするに違いない。そんなこんなで、災害の被害が甚大な北海道の今後が心配なこの頃だ。
▼さて、大間原発工事再開延期の話に戻そう。大間原発を建設する電源開発が、原子力規制委員会の厳しい新基準をクリアーするためにというのが表向きなのだろうが、2年ほど工事再開を延期するという。ここで思い出すのが、先日、幌延の核のゴミ埋設研施設を、原子力規制委員会が視察していることだ。我が国は核のゴミ捨て場がない。なんと行っても捨て場を確保しなければ、原発再開や新設は無理なのだ。そこで、財政が逼迫する自治体の多い北海道を、ゴム捨て場の最終候補地に絞ったのではないかというのが私の憶測だ。アベ総理・ムネオさん・原子力規制委員会の田中委員長・菅官房長官などの顔が浮かんでくるからだ。
▼電源開発から函館市に、この説明に伺いたいと電話が入ったが、市側では「再開を前提とするなら拒否する」と回答したという。函館市はこの原発の建設反対で国に提訴している。だが、市民にはその後の経過がよくわからない。電源開発の考えや市側の考えを公開で開催する機会を設けてほしいものだ。市民がこの問題をよく知らないため、だんだん原発問題に関心が失われていくような気がするからだ。最近、市長の口から大間原発の話を聞いたことがないのも心配の一つだ。工事延期で、反対する市民団体からは「電源開発も建設するかしないか、悩んでいるのではないか。建設中止につながる一歩になると期待したい」と述べている。だが、先に述べた顔ぶれを思い出すなら、そう簡単ではないような気がする。
▼さて函館市町会連合会大間原発反対実行委員会では、10月17日(月)午後6時、函館市民会館において、大間原発反対市民集会を開催する。講師は、東北大学で福島原発事故後海洋調査を続けている片山教授が、原発後の海と大間原発ができた場合の、海への影響について講演する。今回は、大間原発反対の車に貼るステッカーを作成し、来場者に無料配布する。市民の車に貼り付けてもらい「走る広告塔」をめざしている。ステッカーは一枚100円で一般の方も購入できるようにしている。9月20日頃からは用意できるので、市町連事務局、電話22−0180まで問い合わせ願いたい。
▼市町連主催なので参加料は無料だ。大間原発建設中止は、市民一人ひとりの熱意で達成しましょう。