▼東京都が発注した豊洲市場の土壌改良工事で、設計と違う構造で出来上がっているのが発覚した。建設現場は東京ガスの跡地で、土壌にベンゼンやシアンの有害物質が含まれているため、有害物質の除去後、盛り土をしてからの建設となっていたが、一部主要施設の下は盛土をせず空間になっていたため、地下水が溜まっていたというものだ。土壌改良費だけで、なんと850億円という。その中で盛土がない部分の費用は30億円ほどだといわれる。地下空間には配管があるので、たぶん点検のために空間にしたというのだろうが、都の担当者は埋め戻し完了と報告し、当時の舛添知事も完了したと発表している。浮いた費用「30億円」地下にでも隠しているのだろうか。設計変更を役人が隠すことではない。どこからの圧力で設計変更が行われたに違いない。
▼ここで思い出すのが、故飛鳥田横浜市長(当事社会党)の、横浜市に計画された大規模工業施設建設時の対応だ。まず声を上げたのは地元医師会だ。大規模な工場建設には公害が発生し、市民の健康を損ねるという指摘だ。そこで市長は、環境汚染の厳しい基準を設ける条例を設置し、企業を従わせた。ここで特出する条例は、土地の転売を規制したことだ。参入するのは大手企業ばかりだ。土地を確保をしてから、後に土地を転売し、市にとっては迷惑企業がそこに居座るのを防ぐためだ。後にそのことが、原子力船むつが横浜を母港とする計画を、阻止することになる。そんなことを、ふと思い出したからだ。
▼今後、東京ガスから、都が購入した土地購入費なども発表されるだろう。そこに介入した都議がいないかなど、国民の関心は膨らんでくるだろう。この事件も、次期東京オリンピック開催に関わる疑惑の、ほんの一部分だろう。都職員や自民党都議連、その背後には大企業に顔が効く、元総理の顔もちらついて来る。足を引っ張られないよう、小池知事の都政改革の采配に期待したいものである。市場関係者で豊洲推進派の急先鋒も、この件については徹底的解明をと怒りをあらわにしている。まがったことの嫌いな江戸っ子の心意気を、世間に知らしめてほしいものだ。
▼先日、下北半島から「核」を考える会の30周年記念講演会に参加してきた。青森出身で元衆議院議員の講師から、なぜ青森県が原発受け入れすることになったのかという話から、元横浜市長の飛鳥田氏のことが語られたのだ。横浜が断ったため、青森県が受け入れたのは、青森県が産業もなく「貧乏」だったという理由だった。満州開拓や六ケ所村の核燃料サイクル施設、さらに原子力船むつの母港建設。そして大間原発の受け入れ。貧乏故に国の政策を受け入れて、自立の精神が失われたという報告だった。さらにそれを推し進めたのは、県や町村の職員までもが動員されたという。地方自治というが、国のいうことを聞いて仕事するのが、地方自治体の姿のようだ。
▼さて、我が函館市だ。大間原発には反対しているが、民間の地熱開発事業を自ら先頭となり推進している。説明会には経済部が参加し、住民の理解に努めている。建設場所は、活火山恵山だ。私の椴法華地区と恵山地区の真ん中にある、道立自然公園内の敷地だ。内容は地元にとってメリットばかりで、デメリットなどどこを探してもないというものだ。東京電力が福島県に原発を作れば、いずれは電気料金をただにすると言った言葉を思い出す。そんなことはないと思うが、市の職員が加われば、安心かと思ってしまう。ただ事業としては小さすぎて、採算が合うのか心配だ。近いうちに第2回の説明会があるようだが、私の心は今のところ白紙状態だ。
▼原発反対を貫いた講師が、最後に言った言葉が心に引っかかる。「役所が支援する国家的事業は、青森県ではことごとく頓挫している」と。私は少しおっちょこちょいのところがあるようだ。好事魔多しという言葉をおでこに貼ったほうがいいと、亡くなった母に言われたのを思い出した。