元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「愛・旅立ち」

2014-11-14 06:35:48 | 映画の感想(あ行)
 85年東宝作品。前にも書いたが、80年代はやたらアイドル映画が作られた時期だ。その大半が毒にも薬にもならないお手軽映画であったことは言うまでも無いが、中には製作意図がまるで分からない怪作も混じっていた。本作はその最右翼で、観た後はまさに茫然自失。よくもまあこんな企画が通ったものだと驚くばかりだ。

 無鉄砲な若者・誠は交通事故に遭い病院に担ぎ込まれるが、幸いにして命をとりとめる。彼は同じ病院に入院していた少女・ユキと知り合い、心惹かれるものを感じる。ユキは天涯孤独で、しかも先天的な心臓疾患で余命幾ばくも無い。ある日、ユキの愛読書の主人公が彼女の前に姿を現わし、一日だけ元気な時間を与えてくれるという。

 一方、将来を悲観した誠はビルの屋上に立ち、自ら命を絶とうと考えていた。そこに駆け付けたのが“一日だけ健常者になった”ユキで、彼女の説得に応じた誠はユキと恋仲になる。だが、彼女に残された時間はあとわずかだった。

 よくある“難病もの”かと思ったら、これが全然違う。冒頭映し出されるのは、何と宇宙空間。そこに母親と赤ん坊が現れて“神とは何か”みたいな会話を始めるのだから面食らってしまう。さらに、倒れたユキに誠が人工呼吸を施すと、突然大地震が起こって彼女は蘇生したりと、ワケの分からないモチーフの釣瓶打ちだ。

 SFX担当に川北紘一が名を連ね、しかもあの丹波哲郎も出ているというのだから、つまりは丹波御大の“大霊界シリーズ”の番外編と言って良いのかもしれない(爆)。監督は舛田利雄で、前に「ハイティーン・ブギ」等のアイドル物を手掛けているが、この映画に限っては霊界パワーに飲み込まれたような酩酊ぶりだ。

 言い忘れたが、誠を演じるのは近藤真彦で、ユキに扮するのは中森明菜である。二人に関しては、演技面ではどうしようもない。たとえ脇に勝野洋や萩尾みどり、峰竜太、吉行和子といった手練れが控えていても、まるで無駄だ。

 なお、薄幸そうな役柄を辛気臭そうに演じる中森を見ていると、最近の“生きているのか死んでいるのか分からない”状態の彼女とオーバーラップしてしまう。かつての同輩だった小泉今日子の健在ぶりと比べると、何ともやるせない。関係ないが、劇中のユキの名字は“小泉”である。楽屋落ちでも狙ったのだろうか(苦笑)。

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