元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「猫なんかよんでもこない。」

2016-02-21 06:40:11 | 映画の感想(な行)

 猫の映像以外には、何ら見るべきものがない映画だ。確かに猫好きにはたまらない作品だと思う。しかし、あいにく私は猫には興味はない(ちなみに、犬にも興味はない。要するに動物にはとんと縁が無い ^^;)。だから、いくら猫が可愛い仕草をしても、映画自体の出来の悪さもそれで笑って許すような気にはなれないのだ。

 漫画家の兄と暮らしている主人公のミツオは若いボクサーだが、成績はいまいちパッとしない。ある朝、ジョギングの途中で子猫が2匹捨てられているのを見つける。猫嫌いの彼は無視して帰宅するのだが、外出していた兄が帰ってくると、両手に先ほどの猫を抱えているではないか。しかも、2匹の猫の世話を押し付けられてしまう。そんな中、試合後の健康診断でミツオは網膜剥離の一歩手前であることを知らされる。思わぬ形でボクサー生命を絶たれ、さらに兄が田舎に帰ることになって一人暮らしをするハメになったミツオの、苦難の日々が始まった。

 猫の描写は良く出来ている。圧倒的に可愛い。特にミツオが床に入ると2匹がダッシュで布団に潜り込もうとするあたりは、実に微笑ましい。だが、人間側の描き方のつまらなさは致命的だ。

 主人公の兄が漫画家をやめて実家に戻るのは、結婚するためらしい。しかし、ミツオには事前に何も知らせず、式に招待した形跡も無い。それ以前に、兄の漫画に対する思い入れも示されない。一転して貧乏生活を強いられる主人公だが、全然困窮しているようには見えない。それどころか猫の餌だけはしっかりと購入している。

 ミツオは猫を可愛がっているように見えて、妙に放任主義。果ては獣医の言うことも聞かずに、結果として一匹を死なせてしまう。時間の進行具合が分かりにくく、季節感も掴めない。猫の成長ぶりを見て何となく想像するしかないのだ。

 そもそも、この映画に主に出てくるのはミツオと兄の他は、主人公のバイト先の同僚である若い女とアパートの大家、この4人しかいない。別に“登場人物は多いほど良い”と言うつもりは無いが、魅力に乏しい主人公をカバーするために多彩なキャラクターを脇に配するという方法もあったはずだ。山本透の演出はテンポが悪く緩慢で、キレもコクも無い。主役の風間俊介をはじめ兄に扮するつるの剛士、松岡茉優、市川実和子、いずれも精彩を欠く。特に風間のワザとらしい一人芝居にはウンザリした。

 それにしても、この映画の時代設定は分かりにくい。登場人物達が使っている通信機器を見ると2,30年前のようだが、そのことに準拠した作劇面での工夫があるかといえば、全然見当たらない。何やら企画段階でも“猫の可愛い姿を披露しておけばそれで良し。あとはどうでもいい”といったノリだったことが想像できるような体たらくである。

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