元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「13/ザメッティ」

2007-05-03 07:48:05 | 映画の感想(英数)

 (原題:13 Tzameti)早くもハリウッドでのリメイクが決定したらしいフランス製のサスペンス篇だが、それも頷けるほどのテンションの高い快作だ。

 貧しい若い男がひょんなことから参加するハメになった“集団的ロシアン・ルーレット大会”。怪しげな連中が出場者に大金を賭け、メンバーは死のゲームに臨まざるを得ない。13人の参加者は6連発のリボルバー片手に円陣になり、隣の男の後頭部に銃を突きつける。この“形式”はユニークかつ面白いヴィジュアルだが、同じくロシアン・ルーレットをネタにした「ディア・ハンター」が戦争の無惨さという大きなテーマを背負っていたのに対して、本作では欲得が全てという実に殺伐としたテイストに彩られているため、即物的な残忍さがより一層引き立つ。

 誰が死んで、誰が生き残るのか。当然、ゲームを重ねるごとに参加者は減っていき、さらに回が進むと同時に込められる弾丸の数も増えていくというのだから、まさに身を切られるようなサスペンスだ。

 ゲラ・バブルアニの演出は緩急を付けた職人芸で、ロシアン・ルーレット場面以外の描写はストイックに抑制されており、登場人物の内面を丹念に綴る。それがまたロシアン・ルーレットの緊張感と見事な対比を見せ、息もつけないハイ・ヴォルテージの求心力を発揮。モノクロでシネマスコープの画面も実に効果的だ。

 監督はグルジア出身で主人公もその設定。しかも主役のギオルギ・バブルアニは監督の弟だという(監督自身も主人公の兄の役で出演)。社会の底辺を這いずり回るしかない移民の身分の彼をはじめ、これだけリスクの高いゲームに何度も参加している(!)メンバーがいるということ、つまりは命を投げ出しても一攫千金を狙わざるを得ないシビアな社会情勢がそこにある。徹底したリアリズムが話を絵空事に終わらせないのだ。

 警察の無能ぶりは気になるが、死のゲームが完結してからの終盤の展開も適切で、ラストの処理も秀逸だ。

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