元・副会長のCinema Days

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「ザ・フォーリナー 復讐者」

2019-06-01 06:31:17 | 映画の感想(さ行)
 (原題:THE FOREIGNER )ジャッキー・チェン主演作としては珍しい、コメディ的要素が皆無のシリアスな活劇だが、とても楽しめた。何より、脚本が良い。事件に絡む複数の勢力を的確に配置し、それぞれに十分な役割を与えた上でラストにすべて回収するという、まるでお手本のようなシナリオだ。筋書きの面白さを味わうだけでも、観る価値はある。

 ロンドンでチャイニーズレストランを経営しているクァン・ノク・ミンは、ある日一人娘のファンを車で送って行った際、爆弾テロに巻き込まれる。本人は難を逃れたが、ファンは死亡。どうやら、北アイルランド解放を主張する過激派組織の仕業らしい。悲しみに暮れるクァンは北アイルランド副首相のリーアム・ヘネシーが昔この組織に加入していたことを知り、犯人の名前を教えるようにリーアムに迫る。



 だが、リーアムも犯行グループを特定出来ていない。それどころかクァンの存在を煙たく感じるリーアムとその一派は、クァンを片付けようとする。しかしクァンはベトナム戦争時代にアメリカ陸軍の特殊部隊に所属していた工作員で、多彩な戦法を駆使してリーアムらを翻弄する。一方、犯人達は2度目のテロも成功させ、いよいよ要人の暗殺に向けて大規模な破壊工作を計画していた。スティーヴン・レザーの小説「チャイナマン」の映画化だ。

 基本的にはクァン及びリーアムとその一派、そして犯人グループの三つ巴の抗争だが、リーアムの妻と愛人、リーアムの甥で元英軍特殊部隊のショーン、事件を追うジャーナリスト、そしてもちろん警察も絡んで、ドラマは複雑な様相を呈してくる。さらには難民であったクァンの壮絶な半生、そして北アイルランドを巡るヘヴィな歴史が通奏低音のごとくストーリーを支えている。

 本当に悪いのはテロ実行犯なのだが、リーアムも“立場上”事件の落とし前を付ける必要があるため荒仕事を請け負う。クァンのやっていることも厳密に言えば犯罪行為だ。各人の一筋縄ではいかないスタンスを冷静に追うことによって、作劇に厚みが付与されている。

 マーティン・キャンベルの演出は骨太かつ着実で、テンポに乱れは無い。そしてジャッキー・チェンのアクションは、同時期に撮られた「ポリス・ストーリー REBORN」とは比べ物にならないほど達者だ。この年齢でよくこれだけ動けるものだと感心する。特にショーンに扮したロリー・フレック・バーンズとの一騎打ちは、全盛期の彼のパフォーマンスを彷彿とさせる。

 リーアムを演じたピアース・ブロスナンはさすがの海千山千ぶりで、ドラマを盛り上げる。オーラ・ブラディやレイ・フィアロン、チャーリー・マーフィといった脇の面子も良い。余韻たっぷりのラストも含めて、鑑賞後の満足度は高い。またカメラマンのデイヴィッド・タッターサルと、音楽担当のクリフ・マルティネスの仕事も高水準だ。

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