元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「普通じゃない」

2019-06-02 06:26:37 | 映画の感想(は行)
 (原題:A Life Less Ordinary)97年作品。天使の策略で出会った男女の恋の行方を描く、変則的なラブコメディ。センスが良いとは言えないこの邦題は“普通以下”という意味で、作品の内容を表現しているのかもしれない。

 ダニー・ボイル監督のハリウッド進出第一作だが、鋭い動きを見せるカメラワークやカッティングの大胆さなどにこの監督の特徴はあらわれているものの、肝心のストーリーがアメリカ映画らしい脳天気なエンジェル・ストーリー(?)であり、舞台も陰影に乏しいユタ州の片田舎では、それらの技巧も上滑り。そしてキャスティング。特に女優陣の扱い方は感心しない。



 キャメロン・ディアスは誰しも認める陽性のキャラクターだが、気取った男勝りの令嬢を演じるにはどうも“無理している”という感が強い。ここは可愛らしさよりも抜け目の無さを全面に押し出せる女優を起用すべきだった(そしてあの音痴ぶりには、観ている側も赤面してしまう)。ホリー・ハンターは久々のコメディ出演で舞い上がってしまったのか、完全なオーバーアクト。未熟な2人をくっつける役目の天使にしてはどぎつい言動が目立ち、天使よりは悪魔に見えてしまう(笑)。かといってC・ディアスとエゲツない張り合いを見せてくれるわけでもなく、画面から浮いてしまった。

 ユアン・マクレガーも今回は影が薄い。デルロイ・リンドやイアン・ホルム、ダン・ヘダヤ、スタンリー・トゥッチといったクセ者が脇に控えてはいるのだが、上手く使いこなしてない。冒頭の“白一色の天国の描写”というのは監督陣の芸の無さか、あるいはあまり難しいことを考えないアメリカの観客におもねた結果か。

 ラストのクレジットでは這々の体でスコットランドに舞い戻るボイル監督を暗示するような人形アニメがバックに流れるが、封切り時に本作を観たときは“やっぱりローカルな映画を地道に撮る方がこの作家には合っている”と思ったものだ。なお、ベックやザ・プロディジーなどをフィーチャーしたサントラ盤だけはオススメである。

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