元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

福岡空港の移転には賛成だ。

2008-05-01 06:32:00 | 時事ネタ
 福岡市博多区板付にある福岡空港を移転する案が地元の財界から出ているが、私は「条件付きで」賛成である。確かに福岡空港は、他の主要都市の空港に比べて格段に便利の良い場所にある。何しろ地下鉄で行けば、博多駅の二駅先なのだ。都心へのアクセスやJR・新幹線との乗り換えに関しても、実にスムーズである。しかし、滑走路は一本のみで、これ以上発着回数を増やすのは困難だ。拡張するにしても、土地買収だけで何年掛かるか分からない。よって、福岡空港の将来像について地元経済界で検討している新福岡空港促進協議会による「福岡県新宮町周辺の沖合に海上空港を新設するのが最も望ましい」という主張は、評価に値すると思う。

 まず移転するメリットとして、空港が近くにあることによる「都心のビルの高さ制限」が撤廃されることが大きい。現在は天神地区でも14階より高いビルは存在しない。この規制が緩和されるといくらでも高いビルが建てられることになり、建築需要が大幅に伸びる。地域経済の活性にも繋がるのは言うまでもない。

 そして、離着陸時の経路にあり騒音に悩まされている福岡市東区箱崎・貝塚方面が格段に住みやすくなる。また現空港の跡地として広大な空き地が出現することになり、ここを副都心として開発すれば莫大な需要が生まれる。さらに、住宅地から離れた場所に建設される新空港は24時間営業が可能であり、上海や仁川とタメを張れるハブ空港として機能させることも出来る・・・・かもしれない。

 もちろん、反対意見もある。その代表的なものは共産党などが主張している“協議会による福岡空港の需要増加の見通しは甘い。事実、ここ数年は利用量は横這いだ。よって、新空港なんか作る必要はない”という意見だ。一見もっともらしいが、よく考えれば本末転倒である。要するに彼らの言い分は“縮小均衡の是認”だ。需要が伸びないという現状をもって、新規投資する必要はないと断じている。思いっ切り後ろ向きのスタンスだ。通常のビジネス感覚を持っていれば、新規投資によって需要を掘り起こすことを第一義的に想定するものだが、彼らにはそういった能動的な考え方には縁がないと見える。

 一方で“福岡空港の移転・拡充よりも、北九州空港や佐賀空港との連携を考えるべきだ”との意見もある(一部の市議などが主張しているようだ)。これも上手い話のように思えて、実はナンセンスだ。もしもそうなれば、現行の福岡空港の離発着便のかなりの部分を北九州空港や佐賀空港に振り分けることになるが、そうなると利用者は飛行機に乗るのにわざわざ隣県まで出かけなければならなくなり、大幅なサービス低下だ。さらに、3つの空港を提携させるには交通網の整備が不可欠である。いったい何で繋ごうというのか。まさか現行のJR線や西鉄の路線を活用しようなんて思ってんじゃないだろうな。たとえば線路も通じていない佐賀空港からどうやってJR線に接続するのだろうか。新たに線路を引く? ならば土地買収に膨大な年月がかかるだろう(脱力)。

 ただし私も冒頭で“条件付きで賛成”と述べたように、推進派の意見を一から十まで鵜呑みにして移転建設マンセーというわけではない。その“条件”は三つある。一つは、言うまでもなく環境問題の克服だ。玄界灘は有数の漁場であるが、水質汚濁なんか起こってしまうと取り返しの付かない事態になる。二つ目は工事の工程である。建設が予定されている新宮沖は、関空のような内海ではなく波の荒い外海だ。水深もかなりある。予定通りに竣工させられるのか、徹底的な精査が必要だ。

 そして第三の“条件”は、新空港までの交通アクセスを確保することだ。大前研一なんぞは“新宮沖に空港を作ると、空港から市街地・商業地への所要時間はゆうに1時間はかかるだろう”などという寝言をほざいているが(まあ、少なくとも博多駅までは絶対に1時間も掛からないとは思うけど ^^;)、大前は“空港までの交通機関は整備しない”という手前勝手な前提でモノ言ってるあたりが痛々しい。----まったく、大前という奴は経営コンサルタントとしては優秀だが、実体経済に関しては無知蒙昧である。コンサルタントの世界に引き籠もっていてもらいたい----。工夫次第で鉄道ラインを中心に盤石の構えにすることは可能なはずだ。逆に言えば、それを考えないで推進側が“空港だけ作ればいい”という筋道しか提示できないのならば、私は反対に回りたい。

 それにしても、こういう公共事業の話になってくると決まって“予算の無駄だ”とか“土建屋への利益誘導だ”とか“そんなカネがあったら福祉に回せ!”なんていうナイーヴ過ぎる意見が頻発するのには失笑を禁じ得ない。予算の無駄? 予算というのは使うためにある。特に経済波及効果が高い施策に予算を使わないで、いったい何に使うのか。使い道に対する代替意見でも出したらどうだ。土建屋への贔屓? 我が国において土建業に携わる人員の数を知った上での物言いだろうか。土建屋と取引のある企業の多さも考え合わせれば、公共事業に対する財政支出は有効な景気対策だということが分かるはずだ。福祉に回せ? 実際に回せるのだろうか。公共投資を取りやめて福祉に回せる実際的なスキームを提示してから意見を言って欲しい。そもそも公共事業による雇用の増大も立派な広義の福祉政策だろう。

 もちろん、今後はどうなるのか分からないが、とりあえずは何が何でも移転建設反対という政治家は信用したくない。反対だけなら誰でも出来る。反対表明だけで、このプロジェクトに替わる具体的な地域活性化策を提案しないような輩は為政者の器ではないと思う。

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