元・副会長のCinema Days

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「推定無罪」

2016-02-13 06:46:50 | 映画の感想(さ行)
 (原題:PRESUMED INNOCENT )90年作品。アラン・J・パクラ監督作としては全盛期の「コールガール」(71年)や「大統領の陰謀」(76年)等と比べると、本作はレベルダウンしている。ただしキャストの頑張りによって、観て損は無い映画には仕上がっている。ストーリー設定も面白い。

 主人公ラスティは優秀で実直な首席検事補として知られ、妻や一人息子との関係も良好のように見えた。ある日、サビッチは上司の地方検事からある殺人事件を担当するように命じられる。それは、部下であった女性検事補キャロリンが殺された一件で、実は彼女こそがサビッチの浮気相手だったのだ。ラスティはショックを押し殺して警察と共に捜査を開始するが、やがて通り魔殺人に見せかけた顔見知りの犯行であることが判ってくる。現場の物証により、何とラスティは一転して容疑者として逮捕されてしまう。彼は、普段は法廷でのライバルであった凄腕弁護士のアルジャンドロに弁護を依頼する。



 重大な事件の真相は、さらなる苦渋にあふれたものであったという図式はパクラ監督の得意とするところであるが、この映画のプロットの組み立て方には難があり、ラストの意外な真犯人も(ドンデン返しのつもりだろうが)取って付けたような印象は否めない。

 しかしながら、いつもは正攻法で容疑者を追い詰めていた検事が、下世話な事情によって逆に追い詰められる立場になるという筋書きには興味をそそられる。しかも、彼をフォローするのが法廷で何度か煮え湯を飲まされた弁護士であるというのも、悪くない趣向だ。

 さらに、アルジャンドロに扮するラウル・ジュリアのパフォーマンスは素晴らしい。人を食ったような口調で蕩々とセリフをまくしたて、しかも一歩も引かぬ堅固な壁のような姿勢を貫き通す。この迫力はアカデミー賞クラスである。

 ラスティ役はハリソン・フォードで、いかにも腹に一物ありそうなインテリを好演している。上司を演じるブライアン・デネヒーや、妻役のボニー・ベデリア、刑事役のジョン・スペンサーも手堅い演技を見せる。ともあれ、上下二巻もある長い原作を無理矢理2時間に押し込めなければいけなかった事情も勘案すれば、及第点を付けられる映画だと思う。

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