元・副会長のCinema Days

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「ARQ 時の牢獄」

2021-04-02 06:24:31 | 映画の感想(英数)
 (原題:ARQ )2016年9月よりNetflixにて配信されたアメリカ=カナダ合作のSF映画。低予算でも求心力の高い作劇を実現しようという作者の意図は感じられ、事実興味を惹かれるようなモチーフは存在するのだが、如何せん全体的に出来が良くない。予算と出演者を絞るのであれば、代わりに筋書きとキャラクター設定に細心の注意を払う必要があるが、それが不十分だ。

 環境悪化とエネルギー危機によって荒廃した未来世界。国家は機能しておらず、世界はグローバル企業のトーラスに牛耳られ、ブロックと呼ばれる反乱軍がそれに果敢に戦いを挑んでいた。そんな中、トーラスの元エンジニアでARQ(アーク)という永久機関を開発していたレントンが、殺風景な建物の中で目を覚ます。隣には元カノのハンナがいるが、状況を飲み込む間もなく4人の男たちが部屋に乱入し、2人を縛り上げる。

 レントンは何とか逃げ出すが、途中で事故に遭って死亡する。すると次の瞬間、彼はハンナの傍らで目を覚ます。どうやら建物の中にあるARQが誤動作して、その近辺だけ時間がループしているらしい。レントンは何度も同じシチュエーションを体験する羽目になるが、そのたびに男たちやハンナの置かれた立場を徐々に知るようになる。そしてある時、直前のループの内容を覚えているのが自分だけではないことに気付く。

 同じ時間を繰り返しているのが主人公だけではないのは、ARQの“規則性”によるものという設定は面白い。また、登場人物たちの微妙な利害関係がループごとの展開に大きく影響してゆくというモチーフも悪くない。しかし、それだけでは上映時間を引っ張ることはできない。

 監督トニー・エリオットの腕前が大したことがなく、サスペンスがちっとも盛り上がらないのだ。とにかく段取りが悪くキレも無い。そもそも狼藉をはたらく4人の男たちの描き分けが不十分で、どいつも同じように見える。まあ、かろうじてリーダー格の奴は少しは目立っているが、凄味が希薄で存在感は皆無だ。

 また、前振りも無くシアン化ガスとかグローブ状の武器とかが唐突に出てくるのも愉快になれない。そもそも、ARQの造型自体にアピール度が不足しており、インターフェースも前時代的だ。ラストは尻切れトンボで、カタルシスは不在。ロビー・アメルやレイチェル・テイラーら出演陣もさほど魅力は無く、これは別に観る必要もないシャシンだと感じた。

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