元・副会長のCinema Days

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「サイコキネシス 念力」

2023-11-13 06:05:27 | 映画の感想(さ行)
 (原題:PSYCHOKINESIS )2018年1月よりNetflixから配信された韓国製SFアクション。さほど期待せず、ヒマ潰しにでもなれば良いと思って鑑賞。導入部の建て付けはチープ感が横溢していて、正直“こりゃハズレかな”と幾分気落ちした。ところが映画が進むにつれて徐々に盛り上がり、終わる頃には満足してしまったのだから世話はない(笑)。やっぱり昨今の韓国作品には“見どころ皆無”というシャシンはあまりないようだ。

 主人公のシン・ソッコンは、妻子と別れて警備員の仕事で糊口を凌いでいる冴えない中年男。ある日、彼は宇宙からの謎の飛来物体から湧き出た成分が混入した湧き水を飲んだ後、念動力が備わったことに気付く。一方、ソッコンの娘ルミはソウルの下町でフライドチキン屋の店長として腕を振るっていたが、その地域は立ち退きを要求する地上げ屋と激しく対立していた。しかもルミの母親は、地上げ屋が雇ったチンピラどもとの小競り合いに巻き込まれ死亡。ソッコンは葬儀の席で久々にルミと再会するが、娘の窮状を知った彼は超能力を駆使して事態の解決を図ろうとする。



 ソッコンが超自然的な力を得た切っ掛けになった隕石(?)の落下に、誰も気付いていないという不思議。くだんの湧き水を口にした人間がソッコンだけだったのかも説明されない。主人公が家を出た経緯は釈然とせず、ルミの店およびその周辺が反社会的勢力に狙われた理由も、実のところ明確ではない。斯様に本作は序盤の構成が安普請で、気の短い鑑賞者ならば早々に切り上げてもおかしくない。

 しかし、我慢して観続けていると中盤以降はかなり挽回してくる。ラスボスとして登場するのは、地上げ屋どもの黒幕である大手ゼネコンの女性常務のホンだ。見かけは普通の若いねーちゃんだが、目的のためには手段を選ばない完全なサイコパスである。彼女は警察をも動かし、ソッコンを拘束してルミを絶体絶命のピンチに追いやる。

 もちろんクライマックスは堪忍袋の尾が切れたソッコンと地上げ屋勢力との大々的バトルであるが、面白いのは通常この手のヒーロー物によく出てくる“主人公と似たような力を持った悪役”が見当たらないこと。ソッコンや街の人々にとって本当に恐ろしいのは、横暴な大資本と強権的な公権力であるという、ある意味“現実”を見据えているあたりは出色だ。終盤の決着の付け方も、超能力では世の中を救えないという達観が見て取れる。

 ヨン・サンホの演出は荒削りだがパワフルで、畳み掛けるような活劇場面と効果的なギャグの挿入で飽きさせない。主役のリュ・スンリョンはショボクレたおっさんがブチ切れるプロセスを過不足無く表現し、ルミに扮するシム・ウンギョンは健気なヒロインぶりを全力で演じている。キム・ミンジェにチョン・ユミ、パク・ジョンミンなどの他のキャストも万全。思わぬ拾い物とも言える作品だった。

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