元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ダイアモンドは傷つかない」

2022-12-18 06:12:05 | 映画の感想(た行)
 82年作品。当時はヤクザ映画などに代表されるような男臭い(≒むさ苦しい)実写映画を数多く手がけていた東映が、珍しく若い女性層の動員を狙って仕掛けた一本。しかも、5月の連休明けを勝手に“OL週間”と命名し、東陽一監督の「ザ・レイプ」(田中裕子主演)との二本立てで臨んだという、今から考えると何とも向こう見ずなマーケティングを採用している。

 予備校で国語を教えている三村一郎は、妻の真知子がいながら元教え子で現在は大学生の越屋弓子と不倫している。さらに彼には10年以上前から付き合っている愛人の牧村和子がいた。真知子の弟で事情を知る中山修司は、一郎に奔放な生活を辞めるように忠告するが、聞く耳を持たない。弓子は一郎のかつての教え子として何食わぬ顔で真知子と対面するが、後日和子と会った際は同じ愛人としてライバル意識を丸出しにする。三石由起子の同名小説の映画化だ。

 一郎は実に不謹慎な野郎だが、いくら周囲から何やかやと言われてもまったく意に介さず、堂々と遊び人路線を突き進んで行く様子は見ようによってはアッパレである。しかも、オッサンのくせに若い女子とよろしくやっているあたり、羨ましくもある(笑)。実際にこんなのが身近にいたら迷惑だが、映画で見る分には存在感のあるキャラクターだ。また、彼をめぐる女たちの鞘当てもけっこう生々しくて見応えがある。

 藤田敏八の演出は取り立てて目立つところは無いが、そこそこ手堅い仕事ぶりだ。一郎に扮した山﨑努の傍若無人な怪演も楽しいのだが、圧巻は弓子を演じる田中美佐子である。これが彼女の映画デビュー作で、いきなり主演クラスという抜擢だが、期待に応えるような熱演を披露。全編にわたって服を着ている場面があまり無いという役どころだが(苦笑)、違和感なく奔放な若い女を演じきっている。

 思えば、この頃の若手女優は当たり前のように“身体を張って”くれていて、今とは時代が違っていたことを印象付けられる。加賀まりこに朝丘雪路、石田えり、趙方豪、小坂一也など、脇の面子もにぎやかだ。大林宣彦や高瀬春奈、家田荘子がチョイ役で顔を出しているのも興味深い。
コメント
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