元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「喜劇 愛妻物語」

2020-10-09 06:26:58 | 映画の感想(か行)

 一応、最後まで退屈せずに観ることは出来た。笑えるギャグもあった。しかしながら、釈然としないものが残る。他人のノロケ話に無理やり付き合わされたような、そんな違和感を覚えてしまう。「百円の恋」(2014年)などの脚本家兼監督の足立紳による自伝的小説の映画化だが、自身の体験談を自分で監督までやって作品に仕上げると、どうしても自己満足的になってしまうのだろう。

 売れない脚本家の豪太は、実質的に妻チカの“ヒモ”のような生活を送っている。2人はとうの昔に倦怠期に突入しているが、それでも妻とヤリたい豪太は妻の機嫌を取ろうとする。しかし、返ってくるのは冷たい蔑みの視線と容赦ない罵倒のみである。そんなある日、豪太の知り合いのプロデューサーから、香川県に絶好の映画ネタがあるので行ってこないかという話が持ち込まれる。そこで豪太は、取材を兼ねた家族旅行を提案。チカと娘のアキは仕方なく同行するが、その取材対象はすでに別の映画会社が押さえていた。その顛末に激怒したチカは、小豆島に住む学生時代の友人の由美の家に一人で行ってしまう。

 まず、この夫婦の造型が気に入らない。豪太は典型的なダメ亭主だが、物書きのくせにパソコン(及びワープロ)は打てず、運転免許証も持っていないというレベルには、正直“引いて”しまう。しかも“カネが無くて風俗に行けないので、妻でガマンしよう”といった身も蓋も無い心情を、滔々とモノローグで披露する始末。

 チカはそんな豪太にとことん罵声を浴びせる。幼い娘がそばにいても、まるでお構いなしだ。どう考えても2人は別れるのが自然だと思うのだが、それでも離婚しないのは、子供がいるからに他ならない。だが、いくら観ている側がそう思っても、実際は2人の関係は続いているのだから処置なしだ。もう勝手にやってくれという感じである(苦笑)。

 足立の演出はストレスなくドラマを進めており、お笑いのシーンも無難にこなすが、ここ一番の盛り上がりに欠ける。あと、トルコの軍楽隊みたいな音楽は効果が上がっていない。豪太に扮するのは濱田岳だが、私はどうも彼は苦手だ。脇役で出ている時は気にならないのだが、スクリーンの真ん中に出てくると受け付けない。

 チカを演じる水川あさみは、若い頃に比べればスキルは上達していると思う。特に身体を張ってのドタバタ演技には感心した。しかし、由美役の夏帆と並ぶと、容姿や演技の余裕感において見劣りしてしまう。豪太の浮気未遂の相手に大久保佳代子が出ているのだが、こっちと交代した方が良かったのではないか。なお、アキに扮した子役の新津ちせはとても達者だ。
コメント
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