元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「トレーニング デイ」

2020-05-01 06:57:36 | 映画の感想(た行)
 (原題:TRAINING DAY)2001年作品。よくあるベテラン刑事と新人刑事とのバディムービーのルーティンを完全無視し、全編これ悪意に満ちたモチーフと暴力性、そしてキャストの健闘により見応えのある作品に仕上がった。さらには一日の出来事に集約するという思い切りの良さ、ロケーションの魅力も光る。

 所轄の交通課からロスアンジェルス市警の麻薬課の刑事に抜擢されたジェイクは、初出勤を迎えて早起きし、遣り手の捜査官アロンゾとコンビを組んでパトロールを開始した。ところが、アロンゾはとんでもない悪徳刑事で、ギャング共とも完全に癒着。彼はジェイクに、これも治安を守るための必要悪だと嘯く。一時はそれも仕方が無いのかと納得したジェイクだが、アロンゾの遣り口は完全に度を超しており、2人は対立し始める。やがて、アロンゾの所業は職務に関係の無い私利私欲のためだったと知るに及び、ジェイクはアロンゾを完全なる敵として認識する。



 最初は仲違いしていた2人が、事件を追う間に互いを理解して絆を深める・・・・といったこの手の映画の常道からは大幅に逸脱し、当初は若い方は理解しようとしていたが、次第に険悪な仲になり終いには激しく対立するという逆のパターンが展開されているのが面白い。しかも、アロンゾは犯罪が蔓延るロスのダウンタウンで強かに生きているという、全身から滲み出る説得力を持っているのが始末に悪い(笑)。

 演じるデンゼル・ワシントンは素晴らしく、それまで“いい人”ばかりを演じていた彼が斯様なワルに扮すると、凄みは幾何級数的にアップする(本作で第74回米アカデミー賞の主演男優賞を獲得)。ジェイク役のイーサン・ホークも好調で、正義感に溢れて新しい職場に飛び込んでみたものの、肝心の上司が超問題人物で手酷く翻弄されるという役柄を、観る者の共感を呼ぶように演じていた。

 アントワン・フークアの演出は彼のフィルモグラフィの中では上位にランクされる仕事ぶりで、一日という時間制限の中に見せ場を次々に織り込み、それらに乱れが無い。後半の銃撃戦から終盤の息が詰まるような対決シーンまで、存分に引っ張ってくれる。

 しかも脇にはドクター・ドレーやスヌープ・ドッグといったラップ勢、そしてスコット・グレンやトム・ベレンジャーといった重鎮まで控えている。本物のストリートギャングの協力を得て実際の“現場”でロケが決行され、臨場感はかなりのものである。マーク・マンシーナの音楽も的確だ。
コメント
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