元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「マイ・インターン」

2020-05-24 06:30:46 | 映画の感想(ま行)

 (原題:THE INTERN)2015年作品。とても評判の良いコメディ映画のようだが、個人的には全く受け付けなかった。ストーリーもキャラクターもリアリティが無く、笑えるシーンは見当たらない。演出はモタモタしていて覇気が感じられず、中盤付近から観ていて眠くなってしまった。作り手自身が物語の要点を見定めることが出来ず、微温的に流してしまったという印象だ。

 ニューヨークのブルックリンに住む70歳のベン・ウィテカーは定年退職後に妻に先立たれ、子供は遠方住まいのため一人で暮らしている。無為に過ごすことを潔しとしない彼は、ファッションサイトを運営する会社のシニア枠採用に申し込み、入社することになる。経営者はジュールズ・オースティンという30歳代前半の女性で、創立から一年半で何百人もの従業員を抱えるまで会社を成長させた。

 ジュールズのダンナは専業主夫で、彼女は幼い娘を彼にあずけて自身は仕事に打ち込んでいる。だが、ジュールズは明らかにオーバーワークで余裕が無い。そんな彼女に人生経験豊富なベンは何かとアドバイスを与え、ジュールズや他の社員もベンに一目置くようになる。そんな時、彼女の側近がCEOを外部から迎えてはどうかという提案をする。

 まず、ベンの造型が説得力を欠く。彼は昔はそこそこ名の知れた企業に勤めていて、しかも元部長だ。そんな人間はたいてい“現役の者たちは全員部下である”と思っている(笑)。ベンのような物分かりが良くて如才なく、オシャレでスマートな御老人は、まずいない。どうしてもそんなキャラクターを創造したいのならば、それ相応の作劇上の手順を踏むべきだが、本作にはそれが無い。

 ジュールズが率いる会社はアパレル関係であるのは分かるが、具体的にどういう商品をどんなポリシーで扱っているのか、なぜ僅かな期間で急成長したのか、さっぱり見えない。ロフトを改造したオフィスの外見こそ垢ぬけているが、社員は長時間労働を強いられており、けっこうブラックな企業だ。

 ジュールズの夫の浮気騒ぎとか、彼女と母親との関係性とか、どうでもいいモチーフが並べられた後は、それこそ気勢の上がらないラストが待ち受けているだけ。ナンシー・マイヤーズ監督の仕事ぶりは、気合いが入らぬ平板なもの。

 ロバート・デ・ニーロにアン・ハサウェイ、レネ・ルッソと悪くない面子は出ているが、上手く機能していない。見どころはジャクリーン・デメテリオによる衣装デザイン(特にデ・ニーロが着るスーツ類)ぐらい。あえてチェックする必要は無いと考える。
コメント
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