元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「荒野にて」

2019-05-11 06:28:41 | 映画の感想(か行)
 (原題:LEAN ON PETE)時代設定が分からないので、観ていてストレスが溜まる。当初は登場人物達は携帯電話を持たず、画面に出てくるテレビもブラウン管方式なので、てっきり80年代か90年代前半の話だと思っていた。ところが劇中で“90年代は良かった”などというセリフが出てきて、ならばこれは2000年代初めかと思いきや、終盤には現代風の小道具が用意されている。斯様に時制が曖昧であることは、作劇に一貫性が乏しいことを示していて愉快になれない。

 15歳の少年チャーリーは、職を転々とする父と共にポートランドに越してきた。母はとうの昔に家を出て、何かと面倒を見てくれた伯母のマージーもチャーリーが12歳の時に父と大ケンカし、そのまま行方知れずになる。ある日、近所の競馬場で厩舎のアルバイトの職を得たチャーリーは、オーナーであるデルから競走馬リーン・オン・ピートの世話を任される。その仕事がすぐに馴染んだ彼だったが、父がトラブルに巻き込まれて死んでしまう。



 身寄りが無くなったチャーリーは、そのままピートの遠征に同行。ピートは年を取っており、やがて殺処分の決定が下される。怒ったチャーリーは、ピートを乗せたトラックを盗んで逃走。かつてマージーが住んでいたというワイオミング州を目指す。

 原題が馬の名前なので、てっきりピートとチャーリーの関係をじっくり描くのかと思っていたら、後半にあっけなくピートと別れてしまう。それにしても、チャーリーの言動は承服しがたい。父親が亡くなった時でもヘンに淡々としているし、ピートと離れる際もあっさりしたものだ。

 加えて平気で無銭飲食をやらかすし、他の車からガソリンを抜き取ったりする。果ては(いくら自分の金を取り戻すためとはいえ)ホームレスに暴行をはたらいて重傷を負わせる。なおかつ反省の色は見られず、刑務所に入るのをイヤだとゴネたりもする。ハッキリ言って、まったく共感できない。アンドリュー・ヘイの演出は要領を得ないままで、テンポも悪い。

 本作で第74回ヴェネチツィア国際映画祭で新人俳優賞を獲得したチャーリー・プラマーはけっこう良い素材だと思うのだが、個人的には映画では活かされていないように思う。ただ、スティーヴ・ブシェミやクロエ・セヴィニー等の脇の面子は良かった。またマウヌス・ノアンホフ・ヨンクのカメラによる荒野の風景はとても美しく、それなりに評価出来る。
コメント
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