元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ア・フュー・グッドメン」

2018-09-30 07:10:00 | 映画の感想(あ行)

 (原題:A FEW GOODMEN )92年作品。良く出来た法廷劇だ。しかも、一般の裁判所ではなく軍事法廷で物語が展開するというのも、題材として目新しい。さらに、昨今マスコミなどで取り沙汰されている各界のパワハラやモラハラの事案をも想起させ、現時点で観ても得るものが大きいと思う。

 キューバにあるグアンタナモ米海軍基地で、海兵隊員サンティアゴ一等兵が就寝中に暴行されて死亡するという事件が起きる。犯人は同部隊のダウニー一等兵とドーソン兵長だった。検察官ロス大尉は、2人を殺人罪で起訴する。内部調査部のギャロウェイ少佐は被告の弁護を申し出るが、実際に任命されたのはハーバード法科を出たものの法廷経験のないキャフィー中尉だった。

 捜査を進めるうちに、サンティアゴは基地からの転籍を申し出ていたことが判明。そして、事件の背景にコードR(規律を乱す者への暴力的制裁)の存在が浮上する。コードRの実行を示唆した張本人として、最高指揮官ジェセップ大佐の名前が挙がるが、証人が自殺してしまう等の不都合な事態が生じ、具体的な決め手は見つからない。窮地に陥ったキャフィーは、一発逆転を狙う勝負に出る。

 国を守るという大義名分のもとでは、各個人の些細な屈託など押し潰して当然だと断じる(まるで体育会系のような)守旧派と、個人の権利を守ろうとするリベラル派との対決という構図はありがちだが、本作ではそこに主人公の成長物語というサブ・プロットを織り込むことにより、作劇に厚みを出している。

 キャフィーの父親は優秀な弁護士で、キャフィー自身はそのプレッシャーに喘いでいる。だからこれまで弁護を依頼された案件も、裁判に持ち込むのを避けて和解や司法取引で決着させるのが常套手段だった。そんな彼が事の重大性を痛感し、法廷で堂々と白黒をつける手段にうって出る。その筋書きは観ていて気持ちが良い。

 キャフィーに扮するのはトム・クルーズで、あまり演技面では実績を残していないと言われる彼にしてはかなり頑張っている。この頃のクルーズは、パフォーマンスの質に関して意欲的だった面もある(今とは大違いだ ^^;)。相手方のジェセップを演じるのはジャック・ニコルソンで、こちらは貫禄たっぷりの見事な仕事ぶりだ。

 ケヴィン・ベーコンやキーファー・サザーランド、J・T・ウォルシュといった脇の面子も良い。ただ、デミ・ムーア扮するギャロウェイがあまり見せ場が無かったのは残念だ。ロブ・ライナーの演出は堅実。ロバート・リチャードソンの撮影とマーク・シャイマンの音楽も申し分ない。
コメント
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