元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ブロークダウン・パレス」

2016-07-29 06:20:16 | 映画の感想(は行)
 (原題:Brokedown Palace)99年作品。シビアな題材を扱っているにもかかわらず、描き方に気合が入っていない。あらゆる面で突っ込み不足で、安手のTVドラマみたいな弛緩した時間が流れるだけだ。

 オハイオ州の女子高校アリスとダーリーンは、卒業旅行としてタイのバンコクを行き先に選んだ。2人はそこでハンサムなオーストラリア人のニックと知り合い、一緒に観光名所めぐりをする。やがてニックは3人で香港に行くことを提案。当日、ひと足早くホテルを出た彼を追って2人は空港に向かうが、そこで思わぬ事件が起きる。荷物の中からヘロインが発見され、当局側に拘束されてしまうのだ。



 事態を呑み込めないまま2人は裁判にかけられ、懲役33年という判決を受ける。“ブロークダウン・パレス”と呼ばれる悪名高いタイの刑務所に投獄された彼女たちの前に、アメリカ人弁護士ハンクが現れ、どうやら件の空港でのトラブルは麻薬取締官のおとり捜査の巻き添えを食ったらしいことが告げられる。とはいえ、2人の荷物に麻薬が入っていたのは事実。ハンクは何とか再審請求をしようとするが、前途にはまだ困難な事態が待ち受けていた。

 麻薬の不法所持を疑われて海外の刑務所に入れられた主人公が辛酸をなめるという設定の作品としては、アラン・パーカー監督の「ミッドナイト・エクスプレス」(78年)を思い出すが、本作にはあの映画の持つ厳しさは見られない。事件の背景にはタイとアメリカ両国の麻薬をめぐる微妙な関係があるらしいが、それも軽く扱われている。

 そして何より、ヒロイン2人に対するイジメが生ぬるい(爆)。まさにどん底の、この世の地獄を見せつけて、人間性が変貌するぐらいにしてもらわないと、インパクトは獲得できない。少なくとも伊藤俊也監督の「女囚701号 さそり」(72年)みたいなエゲツなさを披露してほしかった。それが無いから、ラストの処理も取って付けたようになってしまう。

 しかしまあ、主演2人にクレア・デインズとケイト・ベッキンセイルという、当時としてはアイドル的な位置付けだった女優を持ってきた時点で、映画の“限界”が見えてしまったのだろう。他にビル・プルマンやルー・ダイアモンド・フィリップスも出ているのだが、手持無沙汰の様子だ。ジョナサン・カプランの演出は平板。映像にも奥行きは無し。良かったのはデイヴィッド・ニューマンの音楽ぐらいだ。
コメント
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