元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ふきげんな過去」

2016-07-23 06:11:25 | 映画の感想(は行)

 ハッキリ言ってカス。存在価値なし。まさに観ていて“不機嫌”になってしまう映画だ。監督と脚本を担当した前田司郎とかいう輩は極限的にアタマが悪いのだが、それ自体は別に驚くようなことではない。無能な奴は世の中にいくらでもいる。問題は、そんなチンピラにカネを出したプロデューサーだ。くだらない人間にカネを渡して好き勝手なことをやらせると、その“被害”は広範囲に及ぶ。具体的に迷惑を被ったのはスケジュールを調整して本作に立ち会ったキャスト、そして安くはない入場料を払って作品に接した観客である(呆)。

 北品川に住む女子高生・果子の家は食堂を経営しているが、実際に切り盛りしているのは祖母とナゾの外国人。父親は一日中ブラブラしている。夏休みのある日、18年前に他界したはずの伯母・未来子が突然現れる。昔、ある事件によって前科者になり、当局からも目をつけられている彼女は、ほとぼりが冷めるまで家に置いて欲しいと言う。さらに未来子は果子の実母だと告白し、周りの家族はうろたえるばかり。未来子は果子の部屋に住み着き非常識な行動を取り始めるが、果子はそんな“母親”のペースに次第に巻き込まれていく・・・・という話だ。

 出てくるモチーフが、まさに“下手の考え休むに似たり”ということわざを地で行くようなつまらないものばかり。運河にワニが出るとか、未来子が昔過激派でダンナに大ケガを負わせたとか、それに懲りずにまた爆弾作りを漫然と始めるとか、未来子の同志らしき男が訳の分からないことを垂れ流すとか、ただの断片的な思いつきで面白くも何ともないネタを得意満面で羅列しているに過ぎない。

 芸能界の一部には過激派だの何だのに場違いな思い入れを抱く連中がいるらしいが、そんな調子外れの心情を披露してもらっても、観る側はウンザリするばかりだ。ストーリーらしきものは無いのだが、それは“狙って”やっているのではなく、最初から物語を構築する力量すら無いことは明白だ。特に終盤の展開など、映画作りを放り出してしまったような醜態をさらしている。

 困ったことに、このクズ映画には小泉今日子に二階堂ふみ、板尾創路、高良健吾、黒川芽以といった非凡な面々が顔をそろえている。彼らの頑張りも徒労に終わったわけで、ご苦労さんとしか言いようがない。映像は美しくはなく、それどころか限りなく薄っぺらい。

 それにしても、舞台になっている食堂は一体何を出しているのだろうか。セリフによれば“豆料理が名物だ”ということだが、それらしい段取りは全く存在しない。ただ“こっちが食堂という舞台設定にしたのだから、それらしい描写が無くてもかまわない”と言わんばかりの傲慢さが窺われるだけだ。こういう映画にはあらん限りの非難を浴びせて、二度と作らせないような姿勢を示すことが、映画ファンとしてのあるべき姿ではないかと、不遜な事を考えてしまった(笑)。
コメント
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