元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「スリー・キングス」

2016-05-22 06:28:01 | 映画の感想(さ行)

 (原題:Three Kings )99年作品。作者の反戦的なスタンスと、肩の凝らない娯楽作としての要素が上手い具合に融合している佳作。またこの時期のアメリカ社会の“空気”と中東地域の情勢を手際良くまとめて見せた点も評価出来よう。

 91年3月のイラク沙漠地帯の米軍ベースキャンプ。湾岸戦争が前月に終結し、兵士たちは帰国の準備をしていた。そんな中、トロイ上級曹長とコンラッド上等兵は、降伏したイラク軍兵士が隠し持っていた地図を発見。ゲイツ少佐はこれがイラクがクウェートから奪った金塊の隠し場所を示しすものだと指摘し、二等軍曹チーフも仲間に引き入れて4人で宝探しに出掛ける。

 その隠し場所の村にたどり着いた一行は、イラク軍が反体制派の村民を迫害している場面に出くわす。行きがかり上、金塊を得たついでに捕虜になっていた村民のリーダーのアミールを救い出すが、イラク軍との戦闘に突入。何とか彼らは国境まで行き着くが、上官のホーン大佐に逮捕されてしまう。ゲイツ達は金塊を利用して事態を打開しようとする。

 観る前は「独立愚連隊」か、はたまた「荒鷲の要塞」みたいなのを少し期待していたが、本作にはそれらの作品ほどの破天荒ぶりは見受けられない。しかしながら、ザラザラの画質に代表されるようなケレン味たっぷりの画像は納得できたし、キャストも演出のテンポも悪くない。

 何より、一応はフセインの侵略行為に対抗する形での“正当性”を獲得していた湾岸戦争も、結果的にこの地域の混乱を呼んだことをヴィヴィッドに描出した点は評価できる。そして、戦争が終わった後の米軍および本国の虚脱感をすくい上げていることにも感心した。終盤付近の筋書きについては異論もあろうが、湾岸戦争をアメリカ側から描く以上、あのあたりが限界だったんじゃないかと思う。

 ゲイツ役のジョージ・クルーニーをはじめマーク・ウォールバーグ、アイス・キューブといった面子も良い。なお、監督のデイヴィッド・O・ラッセルは湾岸戦争に対して批判的な姿勢であったらしく、この作品の後にイラク戦争のドキュメンタリー映画も撮っていたらしいが、残念ながら“さる筋から”の横槍が入って今では観ることが出来ないという。まあ、アチラの映画界もいろいろと裏の力関係がうるさいのだろう。
コメント
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