元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「白ゆき姫殺人事件」

2014-04-19 06:48:50 | 映画の感想(さ行)

 薄っぺらい映画だ。湊かなえによる原作は読んでいないが、彼女の作品は何冊か目を通している。印象としては“オバサンのグチ”と変わらないレベルで、とても評価出来るものではない。2010年に中島哲也監督が「告白」を映画化した際は、その安っぽさを逆手に取ったようなやりたい放題の外連味の連続で多くの観客を納得させたものだが、今回は(おそらく)原作を単純にトレースしているだけだと思われ、軽量級素材のチープさが前面に出ているような印象を受ける。

 化粧品メーカーの社員である三木典子が山中で殺される事件が起こる。その手口は残虐極まりなく、典子が評判の美人だったせいもあり、ワイドショーの絶好のネタになる。一方、テレビ局の臨時雇いのADである赤星雄治は交際相手の里沙子から典子が彼女の同僚であったことを告げられる。

 里沙子によると、事件当日から行方をくらましている城野美姫という社員がいるらしく、本人の性格や状況から考えても事件への関与を疑うに足る人物であるらしい。さっそく赤星はこの企画を局に売り込み、高視聴率をあげる。はたして美姫は真犯人なのか・・・・という話だ。

 要するにマスコミの暴走を基本モチーフとした作劇である。しかし、同様のテーマを扱った過去の作品群、たとえば滝田洋二郎監督の「コミック雑誌なんかいらない!」や片岡修二監督「地下鉄連続レイプ 愛人狩り」、井坂聡監督「破線のマリス」などと比べても大幅に落ちる出来だ。

 それは、本作におけるマスコミの捉え方が表面的に過ぎるからである。もとよりマスコミに“責任感”などというものは存在せず、ましてや“心からの謝罪”や“反省”なんかとは無縁であることは誰もが知っている。そのマスコミを扱うにあたって通り一遍の描写しかせず、結果として“やっぱりマスコミはロクなもんじゃありません”という陳腐なお題目しか提示していないのだから呆れる。前述の過去の作品群のように、もう一歩踏み込んで目を見張る成果をあげて欲しかったのだが、凡庸な監督(中村義洋)には無理な注文であったようだ。

 本作はマスコミに関するネタの他に、歪に肥大化するネット情報をも取り上げて“時代性”を出そうとしたようだが、これもまた中身が空っぽで話にならない。ネット情報の多くが空疎であることなど、これまた誰もが承知している。それを何の工夫もなく披露しているだけで、この映画の送り手こそが“情報弱者”の最たるものではないかと疑いたくなる。

 ドラマの焦点となるべき殺人事件の真相たるや、御都合主義が屋上屋を架している状態で話にならない。サブ・プロットみたいな“ミュージシャン転落事件”の扱い方も手抜きだし、そもそも美姫が事件が起こってから失踪している理由も分からない。

 ヒロイン役の井上真央をはじめ、綾野剛や谷村美月、染谷将太、貫地谷しほり、金子ノブアキなど期待できそうな面子(菜々緒と小野恵令奈は除く ^^;)を揃えていながら、どれも大したパフォーマンスをさせてもらっていないのも噴飯ものだ。テレビの2時間ドラマにも劣る内容で、観る価値は無い。
コメント
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