元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「四十七人の刺客」

2014-02-03 06:40:50 | 映画の感想(さ行)
 94年作品。市川崑監督による“新解釈の忠臣蔵映画”という触れ込みで拡大公開されたが、まったくもって気勢の上がらない出来に終わってしまった。少なくとも、同時期に公開された深作欣二監督の「忠臣蔵外伝 四谷怪談」のヴォルテージの高さとは比べようがない。

 池宮彰一郎による原作は読んでいないのでハッキリしたことは言えないが、これは赤穂側と吉良側という二項対立の図式を作り、権謀術数によるシミュレーション・ゲームのような構造にしたかったのだと思われる。そうでなかったら、このあまりにも素っ気ない作劇は説明出来ない。



 ところが、映画の進行はそのようなRPG仕様(?)に準拠していないのだ。対立軸が見当たらず、それぞれが自分の陣営内で悶々とするばかりで、ドラマのベクトルが全然外には向いていかない。

 今回ばかりは大根モード全開の大石内蔵助役の高倉健や、冗談としか思えない色部又四郎役の中井貴一の白塗り顔、作り手の演技指導も本人の演技する意志も不在だと思わせた宮沢りえ等のパフォーマンスに呆れていると、討ち入りのシーンの決定的な迫力のなさに絶句した。

 吉良邸を要塞に見立てて緻密な活劇パターンでも構築してくれれば失点も抑えられたかもしれないが、そのあたりも落第点。とにかく、緊迫感がほとんど無い。加えて、何やら奇を衒ったようなラストの大石内蔵助のセリフを突きつけられ、面食らってしまった。

 なお、私は本作を公開前の試写会で観たが、驚いたのが映画の中盤あたりから、かなりの数の客がゾロゾロと帰ってしまったこと。高倉健と中井貴一の舞台挨拶があったにもかかわらず、こんな体たらくになってしまったのは、作品のレベルを如実に示していたと言えるだろう。
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