元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「居酒屋ゆうれい」

2014-02-01 06:41:03 | 映画の感想(あ行)
 94年作品。横浜の下町にある小さな居酒屋を舞台に、店の主人と死んで幽霊になった前妻、そして新しい妻が繰り広げるドタバタを描いた喜劇。とにかく、この年代に製作されたとはとても思えないような、古くさい人情話である。

 居酒屋「かづさ屋」の主人・壮太郎は妻・しず子が息を引き取る前に、絶対に再婚はしないと約束する。しかし、兄夫婦の奨めで見合いをした相手の里子に一目惚れし、一緒になってしまう。それを知ったあの世のしず子は、恨みを持ってこの世に戻って来る。監督は後年「ぷりてぃ・ウーマン」や「ショムニ」などを撮る渡邊孝好。



 原作が葛飾北斎の娘を描いた「応為担担録」で知られる山本昌代の原作らしく、雰囲気は江戸時代の“町人もの”のようだ。3人の主要登場人物以外のエピソードも、何とも古風に過ぎる。野球賭博で別れた女房が危機に陥ったり、蒸発して自分の居場所もわからなったという客の側の話等は、一見ヴァラエティに富んでいるように見えて、実際はあまり気勢が上がらない。

 新しい女房の元彼が刑務所を出てくるシークエンスも、撮りようによってはいくらでも盛り上がるのだが、何やら沈んで見える。いっそのこと時代劇にしてしまった方が違和感は少なかったかもしれない。

 また、脚本に田中陽造を持ってきているのならば、過去と現在とが入り組んだようなトリッキィな仕掛けぐらい用意してもよかった。

 主演の萩原健一と山口智子、室井滋の3人をはじめ、三宅裕司や西島秀俊、八名信夫、橋爪功、豊川悦司といった多彩な顔ぶれを揃えているのがもったいないような気がする。なお、評論家筋には好評だったらしく、その年のキネマ旬報ベストテンには3位にランキングされていて、後に続編も作られているが、個人的にはあまり持ち上げる気にはならないシャシンである。
コメント
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