元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

養老孟司「バカの壁」

2008-11-01 07:23:01 | 読書感想文
 言わずと知れたかつての大ベストセラーであるが、中身は非常に軽い。「話せばわかるなんて大嘘だ。そこにはコミュニケーションを断絶させる“バカの壁”があるのだ」という事実はマトモな社会生活を送る者ならば誰でも勘付いているし、学生時代に読んだ社会学のテキストの前文にも書いてあったように思う。

 これらの「常識」を解剖学的見地からアプローチしてみたのが本書のセールスポイントだが、通り一遍のことしか書かれておらず、知識欲を持った読者を満足させるレベルには至っていない。しかもインタビュー記事から原稿を起こしているためか、話に一貫性がなく論拠にも乏しい。

 反面、平易な文章で何も考えずにスラスラと読めてしまうのも確か。要するにこれは、普段は小難しい文献など読まない層が「バカの壁」という挑発的なタイトルに乗せられて購読し、ちょっと「利口」になったような気分を味わえるという「アイデア商品」だったのだろう。どちらかというと社会人よりも中学生・高校生が読む方がふさわしかったと思う。
コメント
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