元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「デジャヴ」

2007-03-26 06:41:20 | 映画の感想(た行)

 (原題:Deja Vu )どんなに矛盾だらけの設定でも、いかに御都合主義的な展開であっても、作り手が観客をねじ伏せる力量さえあれば面白く観られるものだ。

 本作に出てくる“衛星地上監視システム”なる小道具は、屋外屋内問わず、地上のすべての映像をあらゆる角度から表示できるという、トンデモな代物だ。しかも、情報整理に4日ほどかかるため、見られる映像は4日前のもので、同時に複数の角度から映し出せないという、これまた取って付けたようなハンディが設定されている。テロリストと警察との攻防という“本題”にしてもプロットの積み上げが大雑把で、これに場違いなタイムトラベルものが絡むと、もう話は支離滅裂だ。

 しかし、それでもこの映画は面白い。プロデューサーであるジェリー・ブラッカイマーのケレン味たっぷりのハデハデ趣味に加え、監督トニー・スコットの“何も考えていないけどクソ力だけはある”という演出が、観客を最後まで引きずり回してしまう。活劇場面も万全で、特に過去と現在とが混濁する映像下での激しいカーチェイスはアイデア賞ものだ。

 加えて捜査官役のデンゼル・ワシントンのスター然とした存在感と、敵役ジム・カヴィーゼルの憎々しさと、ヒロインに扮する新鋭ポーラ・パットンの魅力も十分堪能でき、観賞後の満足感はけっこう高い。

 極めつけは舞台がニューオーリンズで、作品がハリケーン・カトリーナの被害者に捧げられていること。天災でやられた上に、非情なテロまでが追い打ちを掛けるというシチュエーションは、まるで傷口に塩をすり込むようなセンセーショナリズムだが、これが観る側にとっては事態の深刻度をより大きく見せてしまう。他人の不幸まで映画のネタにしてしまうのはホメられたことではないが、ブラッカイマーならば“天晴れなカツドウ魂”として通ってしまう。

 それにしても「デジャヴ」という題名ながら、本来の意味での“デジャヴ”とはちょっと違うモチーフになっているのも、まあ御愛嬌だろう(爆)。
コメント
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