元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「快盗ブラック・タイガー」

2007-03-19 06:41:51 | 映画の感想(か行)
 1950年代のタイの農村地帯を舞台に、金持ちの娘と貧しい農民の息子で今や盗賊団の一員となった青年との悲恋を描く2001年度カンヌ映画祭出品作。

 これがデビューとなる監督のウィシット・サーサナティヤンはCMディレクター出身で、大時代なストーリーをネタに、極彩色の画面と書き割りのセット、大胆な合成など、あらゆる小手先の映像ギミックを総動員して独特のキッチュな世界を展開させている。

 しかし、困ったことに映画としてはさっぱり面白くないのだ。こういう“手法オンリー”のやり方では観客の目を引き付けられるのはせいぜい20分が限度である。この調子で2時間も続けるのは辛い。真に一本の映画として観る者に感銘を与えたいならば、テクニックに加えてストーリーラインや演出リズムといった基本的なツボをも押さえておかなければならないが、この映画にはそれが全くない。昔の大映ドラマみたいな予定調和的なクサい芝居を意図的に延々と流すだけで“ハイ、なかなか笑えるでしょう?”と言われてもそうはいかないのだ。

 加えて、軽佻浮薄なエクステリアとかけ離れたような残虐非道な描写が頻繁に挿入されるのには閉口した。マカロニ・ウエスタンのパロディのつもりだろうが、観ていてイヤな気分になるだけだ。海外マーケットを意識したいなら、新奇な手法ばかりに色目を使うのは禁物。まずは国柄に合ったアプローチから考えるべきだろう。
コメント
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